度重なる財政出動・金融緩和・減税。
すべて効果がなかったように見えます。
名目と実質
しかし効果がなかったと感じるのは、デフレが続くことや国の借金が増え続けていることでそう感じるということであり、実際の日本経済は全力を出しながら成長を続けているのです。
実質GDPの推移
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDP_R&c1=JP&s=&e=
これがデフレが悪と言われている所以です。
しかしこの考え方は、実は逆なのです。
これまで見てきた通り、異次元緩和―市場が必要とする水準以上にお金を押し出す政策―はデフレを助長させるだけでした。
行き過ぎた緩和により本来生き残ることのできない企業が生き残り、生産余剰を押し出し、デフレを加速させます。
需要と供給という経済の王様の前では、貨幣数量理論は無力だったのです。
実質では成長できても、名目で成長させることはできません。
競争力と為替
人口減少で需要が減る中では、どうしても名目GDPは減少します。
国内需要が減る中で海外に活路を求めるということは、通貨高を招きます。
市場で決まる為替を無理に通貨安に誘導すれば、海外から批判を浴びます。
海外にモノを売るということは、海外の人が自らの労働により生産して消費するはずだったものを売ることであり、海外の人の労働機会を奪うことになります。
無理をすれば批判を浴びないわけはありません。
小国ならともかく、日本のような規模になれば、売りっぱなし奪いっぱなしというわけにはいきません。
やるのであれば正々堂々と、通貨高でも売れるモノを作っていく必要があります。
しかし日本の国際競争力は年々低下の一途をたどっています。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc123110.html
2003-2006年にむけてランキングが上昇していますが、これは円キャリートレードにより貿易水準より円安に振れたこと。
また2012年以降もやはりアベノミクスにより、貿易水準より円安に振れたことが原因です。
つまり為替によるかさ上げ以外の何物でもありません。
競争力の低下を行き過ぎた円高の結果と捉えると見誤ります。
海外にモノを売れば、それだけ円高になるのはあたりまえなのです。
アメリカは1990年代以降、ほぼ為替介入をしていません。
日本は幾度となく為替介入を繰り返し、その結果世界一巨額の米国債を保有するに至っています。
日本が貿易水準より明らかに行き過ぎた円高になったのは、唯一クリントン政権のジャパンバッシングの時くらいではないかと思います。
競争力低下の原因
日本の競争力の低下は、高齢化とともにあります。
日本のIT投資の遅れはよく指摘されますが、IT投資をしても人間が使いこなせなければ意味がありません。
日本はいまだにFAXを使っていますが、欧米ではほぼ全廃され、見かけることはありません。
Webサイトからダイレクトに電子データ化された注文を受け取り、商品の発送まで流れていきます。
しかし日本では顧客も代理店も高齢化しており、いまだに手書きFAX経由で注文が来ます。
OCRでは読み取れず、派遣社員を雇って手書き文書を電子データにタイピング変換しています。
また、社内でマクロを組んで業務を効率化しても上長がメンテできず、部下の移動によってまたローテクに戻ります。
このあたりは会社員の方なら日々痛感しているところではないかと思います。
どんなに優秀でも、高齢化により質の低下は避けられません。
デフレと付き合うか抗うか
国内はフル回転。
海外に打って出るには高齢化でブレーキがかかります。
高齢化がなくとも為替で自然にブレーキがかかるため、日本のような規模の国が海外に活路を求め続けるのはおのずと限界があります。
やはり国内をベースに物事を考える必要がありそうです。
人口減少社会では供給側である社会のインフラはそのままで、需要側の人口は日々減り続けます。
供給側が減るのは、工場のライン停止や設備更新の際の縮小を待たねばならず、それは競争に敗れた企業の淘汰を待つことにほかなりません。
しかし待っている間にも日々人口は減っていきますが、企業側は懸命に生き残りを図り、生産を続けます。
人口減少社会では、デフレがベースとなります。
デフレは悪でもなんでもなく、人口減少による自然現象なのです。
それに逆らってお金を投下しても意味がありません。
日本はゼロ金利・完全雇用で既に全力で走り続けています。
全力のところにお金だけ投下しても、これ以上は何も増えないのです。
人口減少と付き合っていくのであれば、デフレ・経済縮小を受け入れる必要があります。
人口が減れば一人当たりの国の借金も重くなるだけであり、減らしていかなくてはなりません。
拡大経済を望むのであれば質だけでは難しく、やはり量の拡大=人口の増加が必要となります。
人口減少を放置しておいて、国の借金を増やし続けている現状が、日本経済をますます衰退させる原因となっています。
それにしてもなぜ人口が減り続けているのでしょうか?
次回はそれを考えていきたいと思います。