前回「マイナス金利の先にあるもの3 - リフレ理論は正しいのか?」では、異次元緩和によっても期待インフレ率が上昇していないということを書きました。
もう一度ブレイクイーブンインフレ率の図を見てみると、名目金利と予想インフレ率は平行して下がっていて、実質金利はほぼ一定であることがわかります。
つまり異次元緩和はゼロ近傍の名目金利を押し下げることで、逆にデフレにを引き起こしているようにも見えます。
なぜ実質金利は一定のまま下がらないのでしょうか?
実質金利の長期推移
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je12/h06_cz0303.html
上記は長期の実質金利の推移です。
1955年以降の長期に渡り、実質金利は安定して推移していることがわかります。
実質金利が大きくマイナスになったのは、狂乱物価と言われた70年代位ですね。
なるほど、70年代のような狂乱物価になれば、人々の消費を刺激するかもしれません。
しかし人口が減少し、供給が常に需要を上回る構造の現在の日本で、そんな物価上昇は起こりそうにありません。
政府日銀も狂乱物価を起こそうというわけではないでしょう。
そんなことをすれば政権が倒れてしまいます。
量的緩和はデフレ政策?
もし仮に実質金利には下方硬直性があり、これ以上下がらないものだとするとどうなるのか?
フィッシャー方程式に当てはめてみると
実質金利(フラット)=名目金利(↓)-予想インフレ率(↓)
名目金利を下げるほど、デフレになる。
こうなってしまっても不思議ではありません。
黒田総裁はインフレ期待が醸成されないのは原油価格の下落が原因だとおっしゃっていますが、原油価格が下がり始めたのは2014年10月からです。
http://www.dreamvisor.com/paratto.pl?code=0701&t=W5Y&w=400&h=270
むしろ2013年4月のバズーカ1の影響は1-2ヶ月でなくなり、2014年10月のバズーカ2はさっぱり効果がなかった。
株価は上がったけど、インフレ率にほとんど影響はなかった。
そんな様子が見て取れます。
そもそもゼロ近傍の名目金利を量的緩和で僅かに下げたところで、消費や投資が活発になるはずがありません。
むしろ通常の金利では淘汰されてしまう競争力の弱い企業が生き残ることによって、供給過剰に拍車がかかる可能性もあります。
経済はいろんな力の押し引きですが、日本の状況では、量的緩和はそもそも、デフレに導く力のほうが強いのかもしれません。
マイナス金利でデフレは加速するか?
そしてそこにマイナス金利が加わるとどうなるのか?
先のフィッシャー方程式(実質金利に下方硬直性があると仮定した場合)
実質金利(フラット)=名目金利(↓)-予想インフレ率(↓)
ここで名目金利のストッパーが外れます。
通常ゼロで止まる名目金利が、さらにマイナス幅で拡大するのです。
実質金利がこれ以上下がらなければ、デフレをさらに進行させることになっても不思議じゃないような気がします。