株価は上がらなかった

サプライズの日銀マイナス金利導入から一週間たち、大方の予想に反して株は上がりませんでした。

先週「2016/1/29 日銀がマイナス金利を導入 - 不思議の世界に迷い込む日本」で書きましたが、実はECBがマイナス金利を導入した際も株式市場の反応は芳しくありませんでした。
なぜ株は上がらないのか、ちょっと考えてみたいと思います。

マイナス金利の効果

先日の日銀のアナウンスメントにはこうあります。
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」では、「量」・「質」・「金利」の3つ の次元のすべての金融緩和手段を駆使して、金融緩和を推進していく。①当座 預金金利のマイナス化によりイールドカーブの起点を引き下げることと、②大 規模な長期国債買入れとをあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えて いく。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129b.pdf

金利を無理やり引き下げることによって、景気を刺激しようという作戦ですね。
しかし2%の物価目標の度重なる後ズレなど、これまでの日銀の目論見は総じて成功していません。
マイナス金利になると本当に物価目標が達成できるのか、また、景気は刺激されるのか?
これだけ外れ続けてるのだから、すべてを疑ってみようと思います笑

今何が起こってるのか?
最初に異常を感じたのは、昨年の夏頃でした。
株価の話ではありません。
何の気なしにAmazonUSを覗いていた時です。

amazonUSで50インチのLED-4Kテレビを探すと、現在499ドルから購入できます。

amazonUS
1ドル120円として、500ドルだと6万円ですね。

一方、日本のアマゾンで同等スペックのものを探すと、15万円以上します。

amazonJP

何だこの価格差は???
500ドル=15万円?
購買力平価だと1ドル300円が妥当ということですね。
ちょっと驚きです。

為替が多少円安に振れても全く問題になりません。
アメリカのテレビは安すぎます。

為替のせいかと思いちょっと考えてみたのですが、昨年安倍さんが最低時給1000円の実現を目指すと言ってましたね。
一方アメリカでは既に最低賃金15ドルがベースラインになりつつあります。

最低時給の人が何時間働けば50インチLED-4Kテレビを買えるかというと、
日本:15万円÷1000円=150時間
アメリカ:500ドル÷15ドル=33.3時間

日本ではテレビを買うのに1ヶ月かかりますが、アメリカでは1週間未満で買えてしまうということですね。
アメリカ人にとっても、テレビは安いと感じるはずです。
アメリカは今、デフレ華やかな頃の日本と同じような状態だと思います。

供給過剰ですね。
今年のはじめにアップルの3割減産ニュースが飛び込んできましたが、ゼロ金利の下で作りすぎてる様子が伺えます。

マイナス金利は逆噴射?
今の話は供給サイドだけですので一概には言えませんが、供給過剰の中、金利をさらに下げるとどうなるか?
黒田さんは期待に働きかけると言うけれど、期待を膨らませて亀山工場・堺工場を作ったシャープはどうなったのでしょうか?
シャープは当時、1社で国内総需要の2倍の生産能力を備えてしまい、10万円を超えていた32型液晶テレビが数ヶ月で3万円台まで下落しました。

ただでさえ資金需要がない中で、金利を下げたからといって銀行が投資先を見つけることができるかというと疑問です。
投資先が見つかったらそれはそれで、少なくとも物価目標に関しては、ネガティヴインパクトのほうが大きそうだなと思ってしまいます。

追記
余談ですが、アメリカのテレビ安売り競争ではいつもトップを争ってるVIZIOというメーカーが有ります。
ここはファブレスメーカーであり、実際の製造はあの鴻海精密工業が担当しています。

この値段ではさすがに利益は出ていないでしょう。
赤字なのに安売りをする目的は、競合他社を退場させることにあります。
競争相手を減らし、価格支配力を手に入れてからゆっくり利益を回収するつもりなんでしょうね。

人口減少の日本でこれをやると終わりのない戦いになりますが、アメリカが戦場ならゆくゆくは価格回復が見込めると考えているんだと思います。

そうすると、なぜ鴻海が金に糸目をつけずシャープを手に入れたがってるのかが想像できます。
iPhoneやテレビなどの製造受注を拡大するために世界一巨大な液晶工場を手に入れ、液晶分野での価格支配力を手に入れたいのでしょう。
シャープは赤字を垂れ流して鴻海に部品を提供しています。
シャープの資産はまわりまわって、アメリカのテレビ購入者に配られてるってことですね。

読者登録してね 

↓他のブログも読んでみる?