※先週アップできなかったので賞味期限切れですが、暇つぶしにどうぞ。
(関連記事:アメリカ連邦政府機関閉鎖で株価はどこまで下がる? 2 )
米財政協議が決着しました。
形の上では延期であり、2月にはまた債務上限問題が来ることになりますが、もう混乱は無いと思います。
連邦政府機関のシャットダウンなんてことを何度もやれるわけがなく、次回の財政協議は無風で通るでしょう。
今回の債務上限問題はオバマ政権は何一つ譲歩することはなく、圧勝で終わりました。
アメリカの政治には、意外に大きな変化だったのではないかと思います。
アメリカは戦後数十年来、何もないときは小さな政府を目指す共和党政権が主導し、経済にテコ入れが必要になったときに民主党政権が出てくるというパターンを繰り返してきました。
そして今回も2008年の世界金融危機をきっかけに民主党政権が誕生し、FRBの強烈なバランスシート拡大路線で困難に対応しました。
ティーパーティの凋落
アメリカ財政の肥大にブレーキをかけようというのが債務上限問題であり、共和党の中でも強硬派のティーパーティーが主導する形で幾度となく債務上限の引き上げに反対してきました。
今回は17年ぶりの連邦政府機関のシャットダウンという事態にまでなりました。
共和党、特にティーパーティとしては「ここが天王山」とわかっていたはずです。
そうそう何度もシャットダウンさせることはできません。
シャットダウン期間の帰休公務員に対する手当てもついたことから、本腰を入れてオバマ政権を攻める環境は整っていました。
にもかかわらず、何の譲歩も引き出せずに終わったことで、共和党としては大きな痛手をこうむることになったと思います。
共和党が得たものは、世間からの悪評だけでした。
共和党-特にティーパーティーは、これで完全に勢いを失ったと思われます。
アメリカは民主党政権長期化へ?
ペイリン氏が大統領候補から姿を消し、2012年大統領選挙も無抵抗のまま敗れた共和党はこれといった候補もなく、明らかに凋落傾向が見受けられます。
対して民主党はオバマ大統領が医療保険制度改革をゆるぎないものにし、次期大統領候補もヒラリーが控えており、順風漫歩に見えます。
共和党はフーバー以降24年にわたり民主党に政権を明け渡したことがありますが、それ以降は3回連続で負けたことはありません。
しかし現在の状況を見ると、フーバー以来となる長期陥落となってしまうかもしれません。
ということは、民主党政権長期化-大きな政府・財政拡大路線が見込まれます。
財政肥大がもたらすもの
アメリカの財政肥大。これは成長率の鈍化につながる可能性があります。
拡大財政-景気刺激の構図が成り立つのは、その量が適切な場合です。
金利はもちろん財政を圧迫して成長の抑制要因になりますが、それ以上に問題なのは、あまりに緩和が強すぎると淘汰されるべきものが淘汰されず、社会の中で非効率な部分がそのまま温存されてしまうことです。
それはともすればアメリカ社会全体の非効率化につながり、超長期で見れば結局アメリカ経済の成長率を鈍化させる結果になる可能性があります。
量的金融緩和が必ずしも成長に結びつかないのは、日本で既に経験したとおりです。
いかなアメリカとはいえ、こんなに短期間にベースマネーを何倍にも膨らませれば、米企業はその肥大したマネーに十分に利を付与することは難しく、低金利が長期化する可能性があります。
そして低金利は低配当利回り≒株高を容認しますが、一方でPERやPBRといった指標からは矛盾が生じます。
「利益水準は低いというのに、いったいこの株価は何年分の利益を先取りしているのか?」という疑問が投資家の中に生じ、株価は不安定にならざるを得ません。
基本的に金融相場というのは不安定なものであり、長期にわたり安定できるものではありません。
米株は既にリーマンショック前の株価を回復し、史上最高値を更新中です。
しかし雇用はリーマンショック前に戻ったわけではなく、低金利を背景として株価の絶対値だけが戻った格好です。
雇用が戻らず非効率を温存したままの米経済が、このまま長期にわたり株高を持続できるのか?
政策に売り無しとは言いますが、ここから先はちょっと慎重な投資姿勢が必要じゃないかなと思います。