先週、東京オリンピックの経済効果についての記事(東京オリンピック決定で株価は上がる? )を書きましたが、経済効果に関してはさまざまな見方が出ているようです。
その中でも最大のものは、大和証券の木野内栄治シニアストラテジストによるもので「東京オリンピックの経済効果は150兆!」とブチ上げているみたいです。
ホンマかいな
日本経済回復 起爆剤に 波及効果、最大150兆円予想も
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130910/biz13091011280004-n1.htm
いったいどこから150兆円という数字が出てくるのか?
根拠はあるのか?
本文中にはこうあります。
「現在、観光が日本の国内総生産(GDP)に占める比率は約5%にすぎないが、今後7年間で約10%に倍増して、95兆円の経済効果を生むと試算した。さらに道路整備など政府のインフラ投資でも55兆円の経済効果が出ると分析した。」
観光で95兆円とはどういう世界なのか?
観光客一人当たり、仮に100万円国内で使ってくれたとしても、約1億人の訪日観光客の増加が必要です。
通常の訪日観光客は年600万人。訪日観光客一人当たり国内消費は11万円程度です。
ありえないでしょ
また、仮に訪日観光客が95兆円を国内で使ってくれると、為替はどうなるのか?
日本の米国債保有残高は約100兆円です。
日銀砲などで為替介入したものがこれに含まれます。
これに匹敵する外貨が訪日観光客により円転され、日本国内で使われることになります。
95兆円の円高圧力。
さらにこの外貨両替の相手方はほぼ日本人となりますが、日本人にとって外貨は使いようが無く一時的な外貨保有となるので、将来この外貨が円転されることになります。
いったいどのくらいの円高になってしまうのか?
おそらくその影響は試算には含まれていないのでしょう。
さらにもうひとつ。
政府のインフラ投資で55兆という主張ですが、オリンピック予算はそもそもインフラ関連費用全部含めても1兆7000億程度です。
インプットも無いのに、どうやってアウトプットが生まれるのか
こうなるともう、錬金術や永久機関の世界ですね(*´Д`)=з
仮に東京オリンピックでで150兆の経済効果が生まれるのであれば、三分の二の規模で行ったロンドンオリンピックでは100兆円の経済効果が生まれてもよさそうなものですが、そんなことはありませんでした。
ロンドンと東京でいったいどんな差があるというのでしょうか?
謎は深まるばかりです。
いろいろ検索してみましたが、東京オリンピックに関して木野内氏本人の書いたものは見当たりません。
メディアの前で、口頭で発言しただけのようです。
どうやら耳目を集めたいだけの大風呂敷で、おそらく言いっ放しで終わると思います。
私も昔、証券会社にいましたが、こういう体質は未だに直りませんね。
この業界は、肩書きや地位のある人が、てんで勝手にテキトーなことを発言します。
バフェットも「証券会社に今株を買うべきかと聞くのは、床屋に髪を切るべきかを聞くのと同じだ」と言っていますが、まさにその通りだと思います。
経済効果150兆円を達成するには
東京都試算のオリンピック経済波及効果3兆円ですが、これでもかなり盛った数値だと思います。
これを上回る、インプットの必要の無い効果を考えるのであれば、気分の高揚により日本人自身が消費を増やす部分を考える必要がありますが、150兆とはどういう世界なのか?
150兆とは、国民一人当たり150万円です。赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人が150万使う必要があります。
一家4人で600万円。
つい財布の紐が緩んでお父さんがレクサスを購入し、おじいちゃんが自宅を改築しちゃうくらいの勢いです。
これが日本中のすべての家庭で起こらないと達成できません。
実際には、エコポイントやイギリスオリンピックで経験したとおり、一部の家庭がテレビを買い替えるくらいがせいぜいではないでしょうか?
それも需要の先食いであり、その後には反動が来ます。
それでもシャープを始め電機業界各社は、特需とその反動で会社が傾きかけるくらいのボラティリティが発生するのです。
オリンピックムードに水を差すわけではありませんが、関連銘柄については手仕舞いの時期を逃さないようにしたいですね。