短編 | YNOのブログ

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仕事から帰り、生きる事に疲れた僕は溜め息をついた。

「ちょっと外の空気をすってくるか・・・」

そう独り言を呟きながら玄関のドアを開けた。

そこには夜の世界が広がっている。

あても無く僕は歩く。

所々、電柱の灯りがピカピカと光るだけで辺りは真っ暗。

気が付くと、僕は公園のベンチに座り、タバコに火をつけていた。

無意識に溜め息を付き、下を向いていると、誰もいないはずのその公園から子供達の声が聞こえてきた。

その声は何十にも重なり、辺りに響き渡る。

不思議に思いながらも、普段は子供なんて嫌いなはずの僕の耳に心地よく聞こえた。

すると、一人の少年が

「ねぇ、一緒に遊ぼう!」

と声をかけてきた。

僕は腕を引っ張られ、子供達と遊んだ。

しかし何か違和感を覚える。

そう、子供達の服装が妙に
古くさいのだ。

一緒に走り回り、普段の疲れが吹き飛ぶ程夢中に遊んだ。
「また一緒に遊ぼうね!バイバイ」

手を振る少年。

一体、どのくらいの時間が流れただろうか・・・。

「ジリリリリリン」

目覚ましが鳴り響く・・・。
気が付くと、朝になっていた。

「ああ、仕事いかなきゃ・・・」

重い体をお越し、急いで支度をした。

何かイベントがあるのか珍しく道路が混んでいる。

今日は遅刻だ・・・

と憂鬱になりながら職場についた。

「またあの人に怒られるれるよ」

そう重いながら、ドアを開けた。

「おいっ鈴木!」

いつもの上司の顔が見える。
「やっぱりな・・」

そう小声でいいながら、溜め息をつき、僕は上司に呼び出された。

「すみません。遅刻しました」

怒鳴られる覚悟で歯を食い芝っていると、いつもは険しいはずの上司の顔が和らぎ

「よくやったじゃないか!」
えっ?

説教を食らうと思った案の上、珍しい事もあるもので僕を誉めてくれた。

その時の上司の笑顔を見て、ふと誰かの事を思い出した。

――――――――1日が終わり家に帰る。今日の朝の出来事を思い出した。

誰かの顔を思い出しそうで思い出せない・・。

歯車が噛み合いそうで噛み合わないようなもどかしさ。

「あっ!昨日の公園の」

頭の中でぐるぐる回るモヤモヤが晴れた。

上司のあの笑顔が、公園で僕を遊びに誘ってくれた、あの少年にそっくりだったのだ。

そう言えば、その少年は僕に夢を教えてくれた。

「まさかな・・・。」

半信半疑、あの男の子が、あの上司ではないかと疑った。
頭で解決すると、いつの間にか僕は何か確信していた。

「立派になったもんだ」

いつものように、独り言を呟きながら、いつもは大嫌いな上司の事が少しだけ、微笑ましく思えた。

忘れているだけで誰にだって子供の頃がある。

大人になり、仕事や社会で疲れはて、だんだん汚れてゆく。

しかし、人々が不意に見せるその笑顔だけは子供の頃と何ら変わらない。

「さて、明日も頑張るか」

いつもは重い体が今日は軽く感じる。

僕は少しだけ人間を好きになれた気がした。

―完―