こんにちは。
今日もハーモニー経営に関する記事の第6話です。
前回からの続きになります。
そしてこちらがこのシリーズの最終話です。
経営層が理解しても仕組みが旧来のままでは動かない。
経営層が「ハーモニー経営」を理解し、取り組もうと考え、その方針を打ち出しても、組織そして現場を動かす仕組みが旧来のままでは、お題目として唱えただけで終わってしまいます。
そこで重要になるのが、理念や文化を支える仕組みとしての マネジメントシステムの有効活用(あるいは再設計) です。
形式的な仕組みから“響き合う仕組み”へ
長年事業を継続してきた組織では、業務のパターンが定型化し、季節ごとの業務も確定しています。順調に経営が行われているとも言えますが、同時にマンネリ化のリスクも高まります。
ISO9001(品質)やISO14001(環境)などのマネジメントシステムは、整然とした枠組みを持ち、品質や安定性を保証する役割を果たしてきました。
しかし、その運用が「ルール遵守」や「証拠づくり」に偏り、現場にとっては“管理されるための仕組み”と感じられることもあります。
決められたことをやっておけばよい、という風土を生み出す遠因になっているのです。
本来、システムとは「人がよりよく働けるように支える仕組み」であるべきです。
マンネリ化を摘み、新たな成長ステージに入るためには、経営理念やビジョンと現場の行動が響き合うように、仕組みそのものをハーモニーの視点で見直す必要があります。
再設計の第一歩は「目的の再定義」
再設計の出発点は、「何のためにこの仕組みがあるのか」という目的の明確化です。
例えば、品質マネジメントの目的を「顧客満足」から「顧客と共に価値を創る」に転換する。
このわずかな言葉の違いが、会議の議題や改善活動の方向性を変えていきます。
目的を再定義すると、やらされ感で運用していた仕組みも“自分たちの成果を生む道具”として理解されるようになります。
これは、ハーモニー経営における「共通の旋律」を作る作業ともいえます。
ISO認証取得についても同様です。
認証取得が目的化すると、本来持っていた良さが失われることがあります。
ISOはあくまで組織経営を高めるための手段であり、「何のためにこの仕組みがあるのか」を常に問い直す必要があります。
現場がよい音色を奏でる仕組みをつくる
再設計のもう一つのポイントは、「現場の声を反映した仕組みづくり」です。
多くのシステムは上位方針から作られますが、日々業務を動かすのは現場です。
「本社が決めたから」「ISOで決まっているから」という理由では、現場は納得しません。
この「やらされ感」を変えるには、現場の声を踏まえた仕組みを作り、PDCAを本来の意味で回すことが必要です。
ところが特にISO認証を取得した企業では、次第に「書類上で回すPDCA」に偏りがちです。
会議の議事録を残せばPlanとDoが済んだことになり、監査の指摘に対応すればActが終わったことになる――そんな形骸化した運用が目立ちます。
では、どこから立て直すか。
答えは、“Plan”と“Do”で終わらせず、“Check”と“Act”を形式で終わらせないことにあります。
- 月例ミーティングで「計画どおり進みました」と結果だけに着目せず、「なぜ進んだのか」「どの部分が効果的だったのか」を議論する
- 失敗があった場合も「誰のせいか」ではなく「仕組みとして何を見落としたか」を共に考える
こうした転換が、報告会を“対話の場”に変え、現場を活かすことにつながります。
現場が「どうせ決まっていることをやるだけ」から「自分たちで良くできる」へと意識を変える体験を重ねることが、ハーモニー経営の基礎です。
経営層に求められるのは「PDCAを意識しなさい」と指示することではなく、現場が自分たちの言葉でPDCAを語れるようになるまで支援する姿勢です。
このサイクルが定着すれば、会議や監査の場も単なる報告や確認の時間ではなく、課題を共有し未来を描くための“対話の場”へと変わります。
形式ではなく中身を重視する
ハーモニー経営においては、形式的な運用を排除し、一人ひとりが「意味を理解して動く」ことを目指します。
- 「自分は何のために働くのか」
- 「自分が目指すものは何なのか」
この自問自答が、個人の目的と組織の目的を重ね合わせ、組織の力を強くします。
ISO認証取得企業であれば、内部監査やマネジメントレビューも「規格要求だから」ではなく、「互いの仕事の価値を確かめ合う対話の場」として再設計する必要があります。
経営者が内部監査に関心を持ち、意味づけを変えることで、やらされ感が減り、組織全体にハーモニーが響き始めます。
こうした“意味づけの転換”が、同じことをしていても結果を変える力を生みます。
再設計は一度で完了するものではなく、組織の成熟度に応じて段階的に進めるべきです。
急いては事を仕損じる──一気に変える部分と徐々に変える部分を識別することが重要です。
ハーモニー経営を支えるマネジメントシステムへ
マネジメントシステムの再設計とは、単に手順を見直すことではありません。
組織の価値観に改めて目を向け、それを社内外に明確にしていく作業から始まります。
理念という「楽譜」を、仕組みという「譜面台・舞台設定」に載せ、現場という「奏者」が自らの音を響かせる。
その仕組みが整ったとき、企業は効率的に動くだけでなく、人と組織が一体となって“響き合う経営”を実現できるようになります。
🎵 ハーモニー経営を支えるのは、音を揃える技法ではなく、音を活かす仕組みです。
(つづく)
詳細原文は
ハーモニー経営コンサルティングホームページに掲載中。
