先日、深夜帯の番組でその方面の専門家や『中の人』が素人の人が知りたくなかったであろう薀蓄を披露する、という企画でこんなネタが放送されていました
「オーケストラは指揮者がいなくても演奏が出来る」
楽器など弾けない私ですが、多少は分かっているので「え?」と思いました
ただそれは『楽器演奏者たちは指揮者を殆ど見ていないで演奏を続けている』『指揮者の仕事の9割は練習に充てられている』という事実を“テレビ的に伝えた”事に対する驚きでした
これは『タングルウッドの奇跡』として知られるヴァイオリニスト“Midori”こと五嶋みどりさんの14歳の時のものです
バーンスタイン指揮のボストン交響楽団との共演で起きたハプニングで、演奏中にヴァイオリンのE線が切れてしまいましたが慌てることなく第1ヴァイオリン(コンサートマスター)に楽器の交換を要求したそうです
この時彼女が使っていたのが子供用の3/4サイズの楽器でしたが、大人用のフルサイズの物(しかもストラディバリ)と交換し何の躊躇も動揺もなく演奏を再開します
凄いのは彼女がヴァイオリンを交換してる間、バーンスタインが腕をビッと止めると奏者たちの音も止まり、彼女の準備が完了すると何の狂いもなく曲が再開されることです
奏者たちが指揮者を見てない、で出来る事ではないでしょう
彼女も絃が切れた瞬間に躊躇いもなくコンマスに交換を要求しに行ってますが、これが14歳の少女だと言うんだから恐ろしいものです
これが奇跡と呼ばれるのは、この直後に交換したコンマスのストラディバリのE線がまた切れてしまい再びコンマスと楽器を交換し、これらのハプニングに動じることなく演奏しきったからでした
この時コンマスは隣りの副コンマスと楽器(こちらも高価なガダニーニ)を交換していました
演奏中に絃が切れるというのは珠にある事だそうで、それに備えて交換用の絃を持って演奏に臨む人も多いそうですが、彼女は2度目の交換の時に最初に切れた自分の3/4サイズの楽器をコンマスが絃を交換してくれていたと思い受け取ったそうです(コンマスはいつも用意していた交換用の絃をこの日は偶々楽屋に置き忘れていて、交換を要求された彼の方がむしろ困惑したそうです)
受け取ったガダニーニに違和感を憶えたのか、急遽最初のヴァイオリンに付けていた肩当てを受け取りガダニーニに装着して演奏を続けたのです(結局副コンマスは心太方式に回ってきたE線の切れた3/4サイズのヴァイオリンで演奏を続けさせられたそうです)
2度目の交換あたりから、ちょっと客席もざわつき始めたのか雑音が入ってるのが分かりますね
翌日のニューヨークタイムズ紙には“14歳の少女、3つのヴァイオリンでタングルウッドを制覇”と報じられたそうで、このエピソードはアメリカの小学校の教科書にも採用されたそうです
( ・ω・) 「おいらが14の時はガンプラとか作ってました」