このDVDは先日発売された『よくわかる!陸上自衛隊』という物です
画像を見て分かるように防衛省/陸上自衛隊が制作協力したソフトなので、利益の一部(自衛隊に入るべき分)は被災地支援に寄付されるそうです
それはともかく自衛隊に似つかわしくないこのナレーションのvoiceは・・・
昨年10月から今年3月まで放送された話題の戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』のキャラクター秋山優香理(正確には中の人ですが、そのキャラとして解説してるという態で)が参加しているのです
それでいいのか!?自衛隊!
まあ現場の自衛隊員にヲタが多いってのは公然の秘密なんですが、ガルパン効果で計らずも人気が出てしまった戦車物だけにそのキャラをコラボって来るなんてナイスな判断と言うべきでしょう(あくまで制作会社の企画であって自衛隊が「ぜひ秋山殿を出しましょうっ」と言ったわけではありません。多分)
発売前から話題沸騰で、オリコンのDVDのデイリー売上ランキングで3位に付けてしまいました
というか、このソフトは海自編と空自編もあるんですけど売れるのかな・・・?(そっちには秋山殿の解説はありません)
こちらは3月24日、作品の舞台となった大洗町で開催される海楽フェスタに陸自が持ち込んだ74式戦車
今年は『ガールズ&パンツァー』との連動企画が色々と催された事の一環と311の被災地でもあった大洗町の町起こしの復興支援という側面もあったのでしょうか、特別に戦車の展示がされてしまいました
他にも作品のキャラクターの中の人達のステージとかがあったりして、大きなお子さん達が大挙して押し寄せたそうです
この動画の見所は01:40あたりから垣間見せてくれる油気圧式サスペンションを使った姿勢制御
※画像は全て拾い物です
この74式戦車は転輪を支えるサスペンションのストロークを油圧と空気圧で制御する事で、自由自在に姿勢変更できる変態戦車です
山がちで起伏の多い日本の地形に対応する為に与えられた機能ですが、配備当時は世界中から「そこまでしなくても」「何を考えてるんだJAPは・・・」とツッコマれていたそうです
これは稜線射撃と言って坂や起伏の頂点の手前でお尻を上げて車体は隠し、装甲の厚い砲塔だけ覗かせて射撃するための機能です
戦車はなるべく背を低く作った方が被弾し難くて良いのですが、砲塔の天井を低くすると主砲の砲尾部分がつっかえてしまうので水平より下に向ける(俯角)のが難しくなります
この為登り坂越しに目標を狙えなくなりますが、だからといって坂を登りきってからだと車体全てを敵に晒してしまう事になるのです
左右にも傾けられるのは、山などの斜面で横向きに構えても砲塔を水平に旋回できるようにするためのものでした
中東戦争の戦訓などからその後各国の戦車も真似するようになり74式の先見性が見直されるようになりましたが、さすがにやり過ぎたと気付いたのか次に開発された90式戦車では前後に傾けるだけの姿勢制御に抑えられました
これは平成22年(2010年)10月24日に陸上自衛隊朝霞駐屯地で行われた自衛隊記念日行事中央観閲式です
中央観閲式は3年に一度行われる伝統の行事で、自衛隊の最高司令官である総理大臣にその人員・装備・規律を確認してもらう、という趣旨のものです
1時間に亘る長い動画なので全部見るのは大変ですが00:12:00~00:21:00辺りまでは是非見ておいて損はありません
まず音楽隊が『行進曲 凱旋』を奏でつつ演奏の位置につき、陸上自衛隊の各兵科部隊の観閲行進の為の『陸軍分列行進曲』に変わります
この00:13:36あたりは鳥肌が立つほどの感動が味わえるでしょう(個人の感想です)
『陸軍分列行進曲』は軍歌である『扶桑歌』と『抜刀隊』と合わせて行進曲にしたものです
共に明治のお雇い外国人シャルル・ルルーの作曲ですが、『扶桑歌』が天皇と日本国を称えるものであるのに対し『抜刀隊』は西南戦争において西郷軍と戦った官軍の活躍を謳ったものです
ちょっと詞を紹介すると
我は官軍我が敵は 天地容れざる朝敵ぞ
敵の大將たる者は 古今無雙の英雄で
之に從ふ兵は 共に慓悍決死の士
鬼神に恥ぬ勇あるも 天の許さぬ叛逆を
起しし者は昔より 榮えし例あらざるぞ
と、朝敵とする西郷隆盛を古今無双の英雄と称えてもいます
西南戦争では西郷の元に結集した不平士族団を相手に、平民を集めた明治新政府の官軍では敵わず苦戦しました
そこで官軍も旧士族の警視隊の猛者を集めて“抜刀隊”を構成してこれに対しました
余談ですがこの警視隊の中には幕末に徳川幕府を守るために闘った『新撰組』の三番隊組長にして幕末屈指の剣豪『斉藤一』が加わっています
幕末に“官軍”として西郷と共に禁門の変を戦い、大政奉還によって“逆賊”となるも鳥羽伏見の戦い・戊辰戦争を節を曲げずに戦いぬき、明治の世に再び“官軍”として西郷と戦う事になったわけで、何とも数奇な運命というべきでしょうか
この『陸軍分列行進曲』は『扶桑歌』部分の前奏から始まるわけですが、哀調を含んだ勇壮なメロディは日清・日露の激戦を戦い抜き、太平洋戦争では無数の屍を晒しつつも祖国を守る事かなわず滅んだ日本の『軍隊』を正に象徴する曲だと言えるでしょう
この中央観閲式では観閲部隊指揮官と国旗に続いて、まず防衛大学学生隊の行進から始まります
各指揮官はサーベルを祓って敬礼を捧げるのが防大学生隊行進における様式なのですが、これは旧軍の伝統に倣ったものです
格好良すぎです
次は防衛医大学生隊の行進ですが、彼らは軍医になるべき者達なので非武装であり衛生兵を象徴するような白いカバンを脇に抱えています
その次は高等工科学校生徒隊です
これは自衛隊の高校・専門学校のような組織であり(4年制)、かつては少年自衛官・自衛隊生徒と呼ばれていたものですが、国連の『武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書』(要は戦争に子供を巻き込むな、という条約)が2002年に発効された事に伴い制度改変された事から陸上自衛隊少年工科学校から高等工科学校へ名称が変わりました
改変前は海上・航空自衛隊にも同様の学校があったのですが、防衛予算の削減もありこちらは廃止されています
第1悌隊が旧制度の生徒なので小銃を持っていますが、第2悌隊は新制度で入校した生徒なので少年兵と見做される事は憚られる為非武装で行進しています
またしても余談ですが防衛大学生が『学生』と呼ばれているのに対し、高等工科学校生が『生徒』と呼ばれているのに気付いたでしょうか
日本の法制度では『学生』とは『大学生』を指し、『生徒』とは『高校・中学生』を指すのです(小学生は『児童』になります)
この後は『本物の』自衛官たちになるわけですが、省略します()
ただひとつだけ迷彩服の首に巻くスカーフの色が兵科によって違うのが目立ちますが、これについて説明します
こういうのは兵科色というのですが普通科、つまり歩兵は『赤』
機甲科、つまり戦車兵は『オレンジ』
特科、つまり砲兵は『黄色』
空挺部隊はパラシュートをイメージする『白』です
自衛隊の行進は、例えば中国とか北朝鮮などに比べると質素というか地味に見えますが、この種の儀典が派手な軍隊ほど『弱い』のは定説となっています(自衛隊のはちょっと質実剛健に過ぎるきらいがありますが、こんな事にもぎゃあぎゃあ喚く連中がいるので必要以上に控えめにしているのでしょう)
彼らの手を大きく振り上げる行進は、ともすれば奇異にも見えるし海外などからは「可愛い」などと呼ばれてしまう事もあるのですが、この種の『健気さ』は日本文化の特徴でもあるので良いと思うのです(ナチスの軍隊がやっていた膝を曲げずに大股で行進する『グースステップ』は大抵の場合ロクでもない国が採用する傾向にあります)
それはともかく、実はこの観閲式が行われた平成22年10月24日というのは色々意味深な時期でした
この9月7日に尖閣沖で中国漁船による海上保安庁巡視船への追突事件が起きており、11月4日にはそのVTRが『sengoku38』なる人物によりyou tubeに流出・公開されました
さらに4ヶ月半後の翌2011年3月11日にはあの大災害が起きています
日本の安全保障と自衛隊の存在意義が改めて問われる最中に行われた式典だったのです
自衛官達の意識と覚悟もまた一入だったでしょう
ただ、ひとつ残念な事実がこの観閲式にはありました
自衛官たちの敬礼を受ける観閲官にして自衛隊の最高司令官が『全くそれに相応しくない人物』だった事です
この時の内閣総理大臣は歴代最悪のあの管 直人でした
この中央観閲式は3年に一度開催されるのですが、つまり今年がその時期にあたります
ですが観艦式などと違い、観覧のためのチケットは一般に配布されていないんです
自衛官や地連の人などから個人的に貰うしかない様で、つまりは関係者でないと直に見る事は適わないらしいです
( ・ω・) 「ちなみにドイツ軍戦車兵の兵科色は昔も今も『ピンク』です」