2005年、W杯予選で主審が犯した誤審により試合そのものが無効とされ、やり直しとなる空前絶後の事態が発生しました
このエピソードの主人公となってしまったのは、当時国際審判資格を持っていた「吉田寿光」氏
2006年W杯のアジア予選5位決定戦(アジアの出場枠は4.5、この対戦〈ホーム&アウェイ〉に勝った国が北中米カリブ海予選4位の国と大陸間プレーオフを戦いその勝者がW杯に出場できる)、ウズベキスタンvsバーレーン戦1st leg(ウズベキスタン・ホーム)での事です
1-0でウズベキスタンがリードしていた前半39分、ウズベキスタンに2点目のチャンスとなるペナルティキックが与えられました
しかし、ウズベキスタンのPKキッカーがボールを蹴る前に攻撃側の選手(つまりウズベク側)がペナルティエリア内に進入していた為、ボールはゴールに入っていましたが吉田主審はファールを取りました
PKはボールを蹴るまではキッカー以外の選手がペナルティエリア内にいてはならず、GKもゴールラインの線上から前に出てはいけない事になっています
守備側の選手が進入した状態でPKが蹴られた場合やGKが前に出てしまった場合(横の移動は良い)、PKのやり直しになります
攻撃側の選手が進入していた場合では、ゴールしていた時はやり直し、セーブされたりポストに当たって失敗していた時は守備側の間接フリーキックからの再開になります
つまり守備側の過失によるファールではPKのやり直し、攻撃側の過失による時は悪質でなければPKやり直しで攻撃側のアドバンテージを取り、悪質な故意性があった場合はPK取り消し、守備側の間接フリーキックでアドバンテージを取るわけです
この場合ペナルティエリアに進入したのは攻撃側のウズベキスタンの選手なので、ファールを冒したのは攻撃側ですが悪質的に守備の妨害をしたわけではないのでゴールが決まっていてもPKはやり直しとなるべきでした
しかし、ボールがゴールに入った直後バーレーンの選手たちが吉田主審を取り囲み「ウズベクのファールだ」「俺達の間接FKだ」とアピールしたそうです(吉田主審談)
吉田主審は引っ掛かるものがあったそうですが「そうなのかな?」と思ってしまいバーレーンの間接FKを宣告しました
ウズベキスタン側から抗議もなく、他の日本人副審たち(この試合は4人全員が日本人)からのアピールも無かった為、試合はそのまま再開します
それでも何か釈然としない部分があったらしく、リスタートの間接FKをやり直させたりしています
前半終了後のハーフタイム、ルールを調べ直した吉田主審は誤審に気付きますがプレーはそのまま進行しており、審判の下した判定は絶対で審判自身にも覆す事はできないのでそのまま進めざるを得なくなったのです
試合はこのまま1-0でウズベキスタンが勝利、4日後に予定されていた2nd leg(バーレーン・ホーム)が行われて2試合の結果で勝敗を決する筈でした
しかし、試合終了直後ウズベキスタンサッカー協会側が「あの判定はおかしい、この試合は3-0で自分達が勝った事にすべきだ」と騒ぎだしました
試合中の暴力や八百長の発覚、サポーターの暴動などで試合が無効になったり結果を破棄して勝ち点が与えられたり、3-0など第2試合のアドバンテージになるような認定試合になることはあり得ます
しかし対戦相手(サポーターも含む)の重過失もない審判の誤審でそうした判定が出る事はありません
抗議を受けたFIFAの裁定は試合そのものを無効として再試合という前代未聞の物でした(勝った側が騒いで勝利が無効になってしまったわけです)
結局再試合はウズベクホームで1-1の引き分け、バーレーンホームで0-0の引き分けでアウェイゴールでバーレーンが勝ちぬけます(そのバーレーンも大陸間プレーオフでトリニダード・トバゴに敗れますが)
吉田主審へのペナルティは国際審判資格の無期限停止でしたが、誤審を確認したハーフタイムの時点で国際審判を辞める事を決意、Jリーグでもピッチに立つ事はないだろうと思っていたそうです(本人談)
しかしJリーグの鈴木チェアマンが吉田氏の能力を惜しんで、Jでは引き続き審判を続ける事ができたのでした
この誤審に関しては副審たちがミスに気付かなかった事も含めて凡ミスもいい所だったのですが、もし選手たちに取り囲まれて怖気づいてしまったならミスでは済まされない問題でしょう
しかし、失敗を言い繕ったり他者に責任転嫁する事無く認めて、世界中の審判の糧にして欲しいというのは好感が持てます
この再試合という判定もどうかと思いますが、某国が傍若無人の限りを尽くした2002年W杯の惨状が少なからず影響していると思うのです
( ・ω・) 「デル・ピエロが緊急参戦してくれる、本日のJリーグオールスター戦にちなんでサッカーネタでした」