我が国ではいわゆる理系の人々が、ややもするとコミュニケーション力不足ではないか等と揶揄される場合があるが、勿論そうではない。自分で確かめてみるという性質を持つ人が多いので、返答に時間が掛かる場合があるだけである。


 さて、地球温暖化については拙稿で何度も触れたが、今回は理系に限らず、自分でも確かめたいという方に向けて、大気中炭酸ガス濃度の変動の原因を考察するという、演習問題を用意した。
大学の理系初年度程度の知識があれば確かめてみることができよう。


 元データはハワイのマウナ・ロアでアメリカ海洋大気庁が測定している炭酸ガス濃度データと、米国二酸化炭素情報分析センターが配布している世界の化石燃料燃焼による炭酸ガス排出量データを用いる。
どちらも1959年-2008年のデータをネットからダウンロードする。


 この演習問題には、手持ちの表計算ソフトなどが使えるであろう。
まず、年々の炭酸ガス排出量を積算して、大気中に排出された炭酸ガスが毎年どれだけ溜まってきたかという時系列データを作る。
次にマウナ・ロアの濃度データにこの排出量積算データをフィッティングさせる。
具体的には、積算データの時系列に一定の係数aを掛けて定数bを加えた数値が濃度データの時系列に最も合致するようにaとbを求めるわけである。
フィッティングの結果、両者は驚く程よく一致するであろう。


 次に両者の差をとると、季節変動分が残る。
両者の一致の度合いを数値化するために、ここからは応用問題となるが、対象としている50年間は季節変動の振幅その他は変化しないとして、この年変動を三角関数の基本波と高次波で表してから差し引く。
得られた残差が、非常に小さくなるのが分る。

 
 筆者の計算によると、その平均二乗偏差は、約0.7ppmとなる。
これは50年間の炭酸ガス測定の中央値が350ppmとすれば、その僅か0.2%にしか相当しない、つまり化石燃料燃焼による排出量でマウナ・ロアの炭酸ガス量の長期変動分のほぼ全てが記述できるという結果となる。


 この結果が示すところは、ここ50年間に自然による一定した吸収があるのは当然としても、増え続ける炭酸ガスのほぼ全てが人為的活動の表れということである。
この話の元データを作ったアメリカ海洋大気庁や他の機関の、これ程の長期間の実直な活動とそれに対する政府の支援には感動を覚えると同時に、変化する地球環境を考慮することなく、ひたすら炭酸ガスを削減するためには、森林保護や植林活動が必要だと喧伝する態度には疑問を感じざるを得ない。


サイエンスライター 朝田培九
この記事は2013/2/26電気新聞に掲載されたものです