昨年10月に「ドーハで新たな窓は開かれるか?」を書いた。
COP18の結果は、「窓枠ができた」程度にとどまった。
COP18はドーハクライメトゲートウェイパッケージを採択し、それまで2つのトラックで行われていた交渉は閉じた。
その一つ京都議定書は、第2約束期間が2013年~2020年と決まった。
しかし、CDMで得たクレジットの使用については、第2約束期間の不参加国には制限がかかった。
新たにニュージーランドが不参加。
もう一つ長期協力行動に関わるトラックは、何かうやむやのうちに終わった。
そしてダーバンプラットフォームがスターダムに上がり、ポスト2020年の新制度に向けた作業ストリームが合意された。
ダーバンプラットフォームのコアになる要素は3つある:
法的拘束力を持つこと、すべての国・機関が参加すること、気温上昇を2℃以下に抑えることである。
この3つの要素をクリアすることは手ごわい。
トップダウン方式の法的拘束力は京都議定書の衰微をみればおのずとわかる。
条約の流れはボトムアップ型の自主的取組みである。
すべての国・機関の参加は「共通だが差異ある責任」を掲げる途上国には受け難く、2℃以下に抑えることは現状の排出パスをとる限り実現不可能なことは自明である。
さて、気候変動枠組条約の究極の目的は、「人為的干渉が気候システムに危険な影響を及ぼさないレベルにまで温室効果ガス濃度を安定化すること」である。
1992年条約が採決され、1995年以降18回に上る締約国会議で明らかになったことは、条約交渉では究極の目的は実現できないということである。
斜に構えた見方をすれば、条約交渉の主目的は、途上国が解消されない南北問題を「共通だが差異ある責任」原則を錦の御旗として、先進国からの大きなマネーフローを作り上げるかに尽きるのではないか?
執拗に先進国の削減目標(キャップ)を上乗せすることが要求されている。
キャップが厳しいほどに自国努力だけでは責任を果たせない先進国は途上国で削減活動を行わねばならず、途上国へのマネーフローが大きくなる。
国富の移転である。
条約交渉には真面目に科学的な削減目標を議論し、削減活動に取組む姿勢はないのではないか?
では何をすべきなのか?
各国は、国情に応じ、それぞれ、可能な相手国と協力して温室効果ガスの削減を行い、互いの協定により、削減結果を国別インベントリとしてまとめる。
気候変動条約は、そうした個々の国の削減努力・活動結果を、透明性を持って集約・整理する枠組みを提供すればそれでよいのではないか?
気候変化の脅威は残るであろうが。
サイエンスライター 新井隆介
この記事は2013/1/15の電気新聞に掲載されたものです