資本主義とは資本を投入して、資本を運動させ、より大きな資本として回収するシステムであると考えられてきたが、近年の我が国の資本主義はこれと異なる様相を呈しているようだ。
ことの起こりは大阪府市のエネルギー戦略会議の提言により、関西電力の筆頭株主である大阪市が、株主総会においてできるだけ速やかな原発廃止を要求するという市側の発表である。
原油をはじめとする燃料価格高騰が始まっているなかで、原子力に頼らず再生可能エネルギーを主とした代替電源の確保を提案するという内容であるので、実行されれば直ちに関電の業績の悪化が予想される。
資本主義社会においては株主の利益の最大化が目的であるのに、筆頭株主が会社の利益を否定し業績の悪化を望むというのは、新奇な資本主義の解釈と言わざるを得ない。
この提案を作成した大阪府市エネルギー戦略会議なのであるが、今年の二月二十七日に第一回が開催されて、三月十八に開催された第三回会議で株主提案の骨子をとりまとめたというから、実にスピード感溢れる会議だったと言える。
当該資料には、全原発の可及的速やかな廃止の他に、発送電の分離や経営体質の強化を謳った役員数と従業員数削減、電気事業連合会からの脱退などが提案され、国レベルの政策に係るものや資産の売却まで様々なレベルの提案が混じり合っていて、議論の末の合意というよりも会議各委員の従前の主張が盛り込まれた結果であるように見える。
さて今回の事態によって、我が国の場合には筆頭株主でさえ、会社の利益ではなく別の主義主張により行動を起こすということが現実となった。
またナショナル・セキュリティを無視して市場万能を唱えることが正義であると主張されるようになったのも見逃せない。
ここからどのような未来が予想されるだろうか。
ひとつには、我が国の根幹を支えているという電力会社の自負の崩壊が懸念されるよう。
選挙民の支持を得ているという理由で電力会社を攻撃するガバメントは、確かにオーセンティックな存在であり、その攻撃に対して電力会社が、これまで持ち続けてきた自負を主張することは困難であろう。
また、ガバメントが攻撃している以上、市場からの資金調達はその困難の度合いを増してくるであろう。
ここに至っては素直に全ての原発を休止状態に転換し、火力発電所と発送電網の保守・補修費用を大胆に削減するのも、我が国においては適切な方法であるかもしれない。
蛇足であるが、大阪市は筆頭株主の立場で会社の業績悪化を目指すのではなく、直ちに株式を売却して自己の投資を確保する方が良いのではないだろうか。
サイエンスライター 朝田培九
この記事は2012/3/27電気新聞に掲載されたものです