“はやぶさ”が“いとかわ”への数年間の長旅を終えて、無事地球に帰ってきた。
もともとの鳥の“はやぶさ”をひも解いてみると、世界的にも広く分布し、わが国ではどこにでも生存できる中型猛禽類の一つで、留鳥として知られ、時速200kmを超えて飛ぶことが確認されている。
一方、生体数は環境変化とともに減少し、国際自然保護連合の指標では「軽度の懸念」に分類され、わが国では700~1000の個体が確認されている程度である。
今まで“隼”“はやぶさ”“ハヤブサ”という名称が、勇ましさや高速をあやかって付与されたものは多い。
最近の例では、東北新幹線に新しく投入されるE5型の車両である。第二次世界大戦の時代には、陸軍の一式戦闘機につけられており、なんと、糸川博士が設計に加わっていた。
現在でも陸上自衛隊や海上自衛隊での型式名称に利用されている。
鉄道ファンにとっても“はやぶさ”は印象深い。
1958年に東京鹿児島駅の寝台つき特急に付けられ、2009年の廃止まで、「富士」や「さくら」と併設されるなど、生き残りに多くの苦労を重ねて、約50年間親しまれてきた。
今回の快挙をなし遂げた“はやぶさ”に着目してみよう。
7年かけて60億キロを飛行して帰還した。
この間 “いとかわ”への着陸時の燃料漏れトラブルで、化学エンジン全数不能。
姿勢制御不能による太陽電池での充電不能や通信途絶
さらにはイオンエンジンも4基中3基が故障といった満身創痍の状態だった。
そうした中で、僅かな充電しかできない電力による電波を利用した制御、太陽電池に受けた光圧での機体の安定化、イオンエンジンの生き残り部品を組み合わせての噴射など、多くの障害を抱えながら、関係者の懸命な努力、それをカバーするだけの潜在的な技術力があっての成果である。
技術者にとって、順調に仕事が進んだ何倍もの大きな経験と知恵を得る機会になったと考えられる。
過去において、月以外の天体に向かって飛行した実験は数多くあったし、宇宙から飛んできた隕石は数多く記録されている。
しかし、人が作り上げたものが、地球からはるか離れた場所に向かい、そこに着陸し、無事帰ったとなると、快挙以外の何物でもない。
科学技術とは、全て予想や計画通りに進むようであれば、さほど大きな進展ではない。
多くの予期せぬ現象に直面してこそ、新たな革新的な技術を生むと考える。
わが国の宇宙技術も先進国に近づいたが、今後の予定はあるのか。
政変や事業仕分けで、予算は削除されていた。
帰還のニュースを受けて、急に予算復活が議論されているようだ。
科学技術の発展を求めるなら、休んではいけない。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2010/6/29の電気新聞に掲載されたものです