CDM(クリーン開発メカニズム)は京都議定書に規定されたメカニズムであり、先進国(京都議定書の附属書Ⅰ国)から発展途上国(非附属書Ⅰ国)への技術移転・普及によりCO2をオフセットし、その分に相当するCO2(温室効果ガス)のクレジット(CER Certified Emission Reduction 認証された排出削減量)を得られる国際的しくみである。
UNFCCC(国連気候変動枠組条約)の統計によれば、2055件のCDMプロジェクトが登録され、年当たり平均約3億4400万トン相当のCERが見こまれている(2010年2月)。
喫緊の問題となっている途上国での温室効果ガス削減のためCDMの早期・広範囲な展開が望まれているが課題も多い。


 CDMとして提案されたプロジェクトがCDM理事会によって登録されるためには、そのPDD(プロジェクトデザインドキュメント)がCDMとして有効であると判定されなければならない。
その判定のキーとなるのが、「追加性」である。一口には、「そのプロジェクトなかりせば」をベースとして、プロジェクト実施によって温室効果ガスの排出が削減されれば、追加性があることなる。
しかし、事はそれほど容易ではない。
追加性の判定については、ガイダンスが定められており(Tool for the demonstration and assessment of additionality)、主として
(1) 提案しているプロジェクトに対する代替案の特定、
(2) 投資分析、
(3) バリア分析および
(4) 普及度の分析、
の4段階からなる。


 詳細は省くが、
(1)では提案するプロジェクトが唯一の代替案ではないこと、
(2)ではCDMのプロジェクトが経済的・財務的に魅力がないか、あるいは成立可能性がないこと、
(3)ではプロジェクトの現実的な実施を阻害する要因、例えば、技術的バリアなど、があること,
(4)では、対象とする地域では一般的でなく、実施事例は稀有であることを示さねばならない。


 つまり、CDMのプロジェクトの追加性要件とは、魅力的投資案件とはなりえず、CERの市場利益なしには成立できず、かつ、適用地域での技術の普及度が低いことである。
これこそまさにCO2削減の円滑な技術移転を阻むバリアである。
CDMのスピードある展開が望まれている現在、そのバリアを作っているのはCDMの判定要件ではなかろうか?


サイエンスライター 新井隆介
この記事は2010/3/23の電気新聞に掲載されたものです