仕事で雪国にやってきた。自称環境にやさしい暮らしをしている者として、駅前から訪問先までバスを利用しようと、バス乗場に向かった。
乗ったバスはボンネット式ではないものの、相当昔に造られたような雰囲気である。融雪のためかボディーは錆びて穴があいている。
乗ってみると、床は木造高床式で、見た目だけからは性能を評価できないが、降り積もって固まってつるつるの路面の上をスイスイと走っていく。
バス会社に問い合わせてみた。
「運行しているバスの中には相当古いものもあるようですが、大事にしているのですね!」と投げかけると、「そうなんです、現在使っているバスで一番古いのは昭和61年製で、その次が63年製です。
うちのバスは平均すると1ヶ月で3000kmほど走りますので、100万km程度走ってきています。」と答えてくれた。
ついでと思って長距離バスの中古市場を調べてみた。10年を超えて百数十万km走っているものが高値で売られている。
鉄道ではどうかと想い、初期の新幹線0系を調べると、およそ13年間で廃車にしていたようだ。
仮に一日に一回東京と博多を往復したとすると2350km、年間300日走るとトータル約900万km になる。また、100系は高速のため10年で廃車になったようだが、1日1往復半走ったと考えると、約1000万kmとなる。
一方ローカル線では、終戦前から走り続けている車両もある。一日100km走り65年程度整備しながら走って、200万kmになる。
私たちに身近な乗り物である自家用車はどうだろうか。
長く乗っても10年または10万km程度で、多くの方はそれ以前に取り換えてしまっている。バスに比べて1/10程度、新幹線に比べて1/100の段階である。
もともと大量生産品の自家用車は、長く使うと安全性が損なわれるのであろうか。
材料の劣化は、環境条件に起因する劣化で、製造からの時間の経過によるものと、ストレスで劣化する使用時間や走行距離によるものがある。
このため車検制度や自主点検など、さまざまな方法で安全に向けた修理や部品交換が行われているのが現状である。
自家用車のライフサイクルでの環境負荷を考えると、製造時や廃棄時に比べて、圧倒的に走行時の負荷が大きい。
それは化石燃料を燃やして走るからである。だとすると最新技術の燃費の良いものへの買い替えが重要となる。
将来、燃料がガソリンからカーボンフリーの電気へと変化すると、自家用車の環境負荷は、製造と廃棄が中心になってくる。
今や車の性能や質は格段に良くなっている。
そろそろ自家用車の世界も他のブランド品同様に、長く大事に使うという習慣を持ちたいものだ。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2010/1/12の電気新聞に掲載されたものです。