最近では環境問題というと、二酸化炭素などによる地球温暖化が中心となっている。

しかし、その一方で、水俣病やアスベスト問題など、地域的な課題も長い年月をかけて解決への努力がなされている。先日、電力会社の株主総会でも一般質問でアスベスト問題が取り上げられていた。


日本の空や川や海を見てみると、今から40~50年前と比べたら、格段と奇麗になっている。

当時の都市部の川は、夏になると異臭が放たれ、冬の逆転層ができた時には、目の前の建物も霞んで見えないことがあった。

これらの時代を通り過ぎて、世界に冠たる火力発電所の脱硫・脱硝装置の装着率にまでたどりついたことは、素晴らしいの一言に尽きる歴史である。

日本がかつて師と仰いだ欧米と比べても、格段の環境対策が施されている。

そんな歴史の中で、地域の環境問題に対する地道な研究は、いまだに進められていることを知った。

かつては銅葺きの屋根の腐食、ミカンの生育不全、漁獲量の減少や魚の奇形など、いろいろな課題に対応してきている。

確かに新たな大型設備が土木作業を経て建設されることに伴い、自然は大きく変化することに間違いはないが、因果関係を評価するのは、とても難しい課題である。


今回、たまたま訪問したところで濁水による魚の生態系への影響の研究が進んでいた。

自然エネルギーで重要視される水力のダムの排砂の影響を評価しているとのことである。


実験を見せていただくと、魚から数本の線が伸びている。

心電図とエラの筋電図を調べるためのセンサーだそうだ。この魚に、濁度をあげたり、水温を変えたり、酸素濃度を変えたり、有害物質を添加したりした水を流すわけである。


 魚は通常の環境では、一定の鼓動とエラ呼吸をしているが、環境が変わると、鼓動呼吸も変化し、ある時は人間の咳やクシャミに相当することもしている。

これが一時的ならば、すぐに元に戻るであろうが、長時間その環境が続いたら呼吸困難や心臓への負担が大きくなって、もとに戻れない。


そんな実験を黙々と続ける先生に伺ってみると、魚は他の動物と違って家畜にならないのですよ、飼い主を識別できる魚は鯉ぐらいで、みんな人を恐れるんです。

だから私なんか、麻酔を使っているとは言え、手術してセンサーを取り付けているのだから、相当恨まれていますよ。

でも、魚が住み安い環境はどんなものか、どの程度ならは一時的な汚染に耐えられるのかを調べて、魚の住める環境を明らかにしてあげるのだから、きっと解ってもらえますよね。


私たちは地球の生物と共存してこそ、知恵と知識を持つ人間なんだと、改めて考えさえられた。



サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2009/8/11の電気新聞に掲載されたものです。