わが国の温室効果ガスの削減をどのように設定するかが議論されている。
すでに約束期間内にある京都議定書の先、2050年には、現状比の-60~-80%とするよう、2008年7月に閣議決定している。
また、その中間の2020年にはどの程度の削減にするかが、今、中期目標として議論されている。
2009年4月の段階で、国の委員会は6種類の案をつくり、どのレベルに設定するかを議論してきている。
一番緩やかな①案では、1990年比で+4%、2005年比で-4%としている。
一番厳しい⑥案では、1990年比-25%、2005年比-30%に設定している。
現時点における削減率はというと、2005年段階で、削減どころか、1990年比で+7.7%になっており、京都議定書の数値は守れていない。
中期目標委員会は、パブリックコメントを、多くの産業会からも一般市民からも求め、6月中に答えを出すとしている。聞くところによると、産業界は①案を中心に、一部の業界では②案で対応可能であるとし、環境NPOを中心に⑥案を推奨しているようである。
私たちは、京都議定書で約束したことが何であったのかを、もう一度振り返ってみたい。
実現の見通しのないものであるなら、どんなに削減目標を掲げた所で、それは絵に描いた餅でしかない。
温室効果ガスの削減の厄介なところは、他の環境汚染物質のように、規制をかけて除去技術が進歩すれば、対応できるという代物ではない。
生活そのものに関わることから、国民合意の下に費用負担をし、産業会も含めて皆が努力をしなければならないものである。
中期目標で示されている①案の実現のための積み上げ試算を見ると、太陽光発電を現状の4倍に、次世代自動車を新規販売の10%に、断熱住宅を新規建設の70%に、電源の原子力比率を40%に、などとある。一方⑥案では、太陽光発電を現状の55倍に、次世代自動車を新規販売の90%に、断熱住宅を既存も含めて100%に、原子力比率を45%に、などとある。
例えば、①案の原子力発電の比率40%を考えてみても、2020年の電力需要を現状並と想定するなら、設備利用率を各段と向上させねばならないし。
省エネ機器の各段の進歩による需要の減少を期待せざるを得ない。
また、⑥案に見る自然エネルギーの設置拡大、次世代自動車や断熱住宅への切り替えなどは、いかに産業界や国民に急激な負担を強いても、実現の可能性は乏しい。
温室効果ガスの削減は、きわめて重要な喫緊の課題である事に間違いはない。
しかし、削減にはとてつもなく大きな技術開発と経済負担が伴う。まずは国民と産業界の懸命な努力で実現できる範囲に設定し、国際的に約束したことへの成功体験を持ちたいものだ。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2009/6/9の電気新聞に掲載されたものです。