中央教育審議会教育課程部会の議論が終わり、新しい学習指導要領ができた。
その解説で「生きる力」をはぐくむという理念は、前回の改定から代わるものではないが、学校現場の課題を解決しながら、より実現しやすい形に変更しているとしている。今まで言われた「ゆとり教育」、そもそも“詰め込み”に対して使った“ゆとり”という言葉を、教育の現場でなかなか“見える化”できなかったことが、見直しにもつながったのかも知れない。
おりしも、経済協力開発機構(OECD)到達度調査(PISA)の結果も報告され、日本の学力低下が大きく叫ばれている中での改定である。
前回の学習指導要綱改定で売り物にした「総合的な学習の時間」は、読解力や科学的な力を身につけるためには、これほどマッチした授業時間はなかったのではないだろうか。
教育現場では、それが見えなかったのか、それとも見ようとしなかったからなのか。
社会では、理科ばなれ、数学ばなれ、技術立国日本の将来はどうなってしまうのか、と言いつつ、子供達は相変わらずの記憶型の詰め込み教育に翻弄されてしまっている。
どこかで、頭が良いことと、学校の成績が良いことの違いを明らかにする必要があるのかも知れない。
そんな感想をもって新聞を見ていると、第5回JSEC高校生・科学技術コンテスト(主催:朝日新聞社)の結果が掲載されていた。
え! これを高校生がやり遂げたの! 生物、物理、科学、数学など、さまざまな分野からの応募であり、それぞれの賞に輝いた内容は、甲乙つけがたいほど立派なものである。
特に感心させられるのは、どの研究にもしっかりとした観察があり、何とかやりとげたいとの思いが生み出すアイデアに支えられている。
また、高校生たちの進める研究に、適切なアドバイスを与えながら支えてこられた先生がたの指導力には敬服する。
自分も同じ科学者の端くれとして、研究を進め学術論文も書き、世の中の問題解決に貢献してきたとの自負もしてきた。
しかし、この高校生達のように、どれだけ現象をしっかり見て、工夫してやり遂げる熱意を持っていたかと反省させられる。
日本の子供達の中には、まだまだ科学する心が残っていることに安堵しつつ、この子供達が、今の気持ちを忘れずに進んでほしいと思う。
そして、点数だけが評価と思っている社会の中で、つぶれずにいてほしいと願ってやまない。
今にこの子供達が、日本そして地球を救ってくれる大きな力になるはずである。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2008/4/22の電気新聞に掲載されたものです。