京都会議から十年が経った。温暖化ガスの6%をどのように減らすかの議論は大事であるが、その間に地球は確実に暖まる方向に向かっている。
地球温暖化がこのまま進むと、電気事業にとっても大きな影響が出てくることは避けられないところである。
電気事業にとっては、夏季の温度上昇に伴う需要の変化にどのように対処するかをはじめ、海抜ゼロメートルの大規模需要家が内陸に移転するなど、需要が時間や空間で大きく変化してくることが予想される。
一方、供給面でも、海水温の変化や降雪量の変化は、発電施設に大幅な影響が出てくるものと考えられる。
それでは、何年ごろにどの程度の変化があって、それまでに何をしておかなければならないかといった問いには、学識経験者をはじめ多くの方々が、さてどんなものかと首を傾げてしまう。
それでは、どこの研究者が、これに解を出すために活躍しているかと問うと、芳しい答えは返ってこないのが現実である。企業側にとって見ても、何かをしなければと概念的にはわかっていても、大きな設備投資になることから、ある程度の信憑性ある答えを待っているわけである。
先日、筑波大学の一室を借りて、「気候影響・利用研究会(会長:加藤央之)」が開かれていた。
そこには、①地球レベルの温暖化予測モデルを研究しているグループ、②地域の影響を評価するため数十kmメッシュへのダウンスケーリングを行っているグループ、③地域レベルで動植物の生態系への影響を評価しているグループ、以上3グループが一同に会して討論する姿があった。
この会の議論の先には、地域レベルの影響評価と、起こるであろう事象への対策であることは間違いない。
この評価のためには、上記の3つのグループが協力しあって、それぞれの目的に添った評価モデルができてこそ、可能になるものである。
国内外には、それぞれのグループの研究者は数多くおられるが、グループ内の議論は頻繁に行われていても、グループをまたぐ議論は、まだまだ多く開かれていないのが現状のようである。
今回は残念ながら、電気事業への影響と対策についての議論はなかったが、早く取り組まないと間に合わないのではと心配になる。
電気事業にとって、直前にせまった京都議定書への対応の議論も大事だが、今後の具体的に立てねばならない対策が何かを明らかにするル必要がある。
そのために必要な研究を精力的に進め、事前に手を打たなければ、需要家ひいては日本国を沈没させかねないのではないか。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2008/2/10の電気新聞に掲載されたものです。