京都議定書で約束した6%の削減の期限が近づき、それぞれのエネルギー利用分野で、努力がなされている。
わが国の二酸化炭素排出の20%を占める運輸分野においては、ガソリンにバイオエタノールを3%混ぜるE3のために、サトウキビの栽培とアルコールの製造の検討が始まっている。
海外においては、サトウキビでアルコールを作るブラジルや、トウモロコシの利用を図っている米国、またインドネシアなどの東南アジアでは油ヤシなどの開発が進められている。
この一方では食料の油製品の値上がり、家畜飼料の値上がりなど、バイオマス資源のエネルギーと食料との取り合いによる影響も出始めている。
わが国の年間のガソリン消費量は約5800万キロリットルであり、その3%をエタノールに頼るとすると、175万キロリットルの生産をせねばならない。
試算によると、サトウキビを沖縄県で生産すると、1ヘクタールあたり3500リットル程度のアルコールができ、小麦を北海道で生産すると、およそ1500リットルできる。
さて、それぞれの方法で175万キロリットルを作るとすると、沖縄の気候で50万ヘクタールのサトウキビ畑が、北海道の気候では117万ヘクタールの小麦畑が必要ということになる。
わが国の国土面積は3780万ヘクタールであり、そのうち農耕地面積は470万ヘクタールしかない。
これらの値に比べて、ガソリンにバイオエタノールをたった3%混ぜるだけのために、相当の規模の耕作面積が必要になることが理解される。
わが国が86%を輸入に頼っている小麦を例に取ると、国内では1ヘクタールで3.7トンが収穫され、80人分の年間消費をまかなえる。
一方、同じ面積でアルコール生産をすると、たった1500リットル分である。カーボンフリーのガソリンを造るか、食糧を確保するか大いに考えるべきであろう。
省エネ運転をすれば、この程度は容易に削減できるはずである。
バイオマスエネルギーは確かに時流に沿ったエネルギー資源ではある。
しかし、国内だけでは十分な耕地を確保できないわが国は、すぐに海外への依存を考えてしまう。現在インドネシアやマレーシア等では、国際ニーズに沿って密林が大規模油ヤシ畑に変化してきている。
地球の環境問題を考えるときに、果たしてこれでよいのであろうか。
食料とも競合せず、今まで廃棄物とされていたものを利用するとか、人間活動のために破壊された環境を修復する上で発生するバイオマスの利用とか、地球全体の環境を配慮したバイオマス利用に向けて、新たな技術やコンセンサスが得られるまで待てないだろうか。
さもなくば、新たな地球環境問題を引き起こしかねない。
サイエンスライター 高岡章喜
この記事は2007/12/11の電気新聞に掲載されたものです。