11話から20話まで無料配信開始となったペントハウス3。
相変わらずの臆面ない悪意の垂れ流しが堪能できるわけだが、登場人物たちが善意と悪意の極限をブンブンと振り切るのと同様、まったく節操のない悪役に燃え上がる正義感を抱くのと同時にそれと表裏一体の際限ない悪意を自分が持つことができるのを体験できる善悪ジェットコースタードラマである。
あっという間に20話まで見てしまい、残り8話は3月にならないと無料配信されないので、ついつい課金する誘惑と戦わなければならない…
ペントハウスが善意と悪意のジェットコースターとするなら、ほんのさざなみのような善意と悪意の揺らぎを見せてくれたのが、silent。
毎回絶叫シーンがふんだんで表情筋の筋トレみたいなペントハウスと対照的に、手話が多用され微表情によってエモーションがこころの奥底に沁み入ってジワジワと涙が滲むワビサビの極致のようなsilent。いい人しか出てこないし、みんなよかれと思っているのに、あるいはそれゆえに生じてしまう、すれ違い&行き違い&心のささくれがなんとも切なく描かれている。
韓国ドラマは感情表現が激しい演出がしばしば見られるのだが、ワビサビ表現がないわけでもなくて、以前にも紹介したIUの「ペルソナ」のエピソード4〜夜の散歩などはモノクロ映像で終始淡々としたトーンでドラマが進み、かつての幸福と残された寂寥感の余韻が半端ない。
そして、「夜の散歩」と連動しているlullaby。
ただの子守唄ではない…
눈을 감아 마지막
目を閉じて 最後の
잠을 재워 줄게
眠りにつかせてあげる
My lullaby Baby sweet goodnight무서운 꿈은 없을 거야
怖い夢はないはずだよ
너의 끝나지 않는 긴긴 하루를
あなたの終わらない長い長い一日を
이제는 그만 보내주렴 음
今はこのくらいで見送ってあげよう
ペントハウスでは殺人事件が何回も起こり、愛する人を失い慟哭するシーンが数多く出てくるが、それとは対照的に、淡々と優しく歌われるこの歌もまた大切な人を何人も失ったIUの心情が聴く者の心の隅々まで満たしていく。