ふ行きつけの歯医者さんの歯科衛生士さんのおすすめで観てきた「キラーズ・オブ・フラワームーン」。
3時間超の長尺の作品を果たして眠らすに観れるのかと思いきや、冒頭からトランス状態におちいり、あっという間に終わっていた。
たまたま住んでるところに石油が出てしまったネイティブアメリカンとその富に群がる人々の人間模様を描く物語で悲劇的な事件にまつわる猛烈な喜怒哀楽のすべてを含みながら、容易な感情移入を許さず、登場人物が激しく歯噛みし涙を流し呪詛の言葉を吐くのをただ呆気にとられてみているうちにどんどんとストーリーが進行していき、大きなため息とともにエンドロールを迎えることとなる。
愚かで弱くて善良で悪辣な人間群像を神の視点から見ることを追体験しているかのような映像体験だった。
監督は大昔の「タクシードライバー」でデニーロと、「シャッターアイランド」でディカプリオとタッグを組んだマーティンスコセッシだが、おんとし80歳でここまで過激な情報量の作品を作ってしまうのはなんとも驚異的。
監督あなただいぶサイコパスなんじゃない?と思えるほどドライでクールで共感を超越した描写を徹底している。
一方、typが好んで見ている韓国ドラマは、共感の沼というか登場人物の感情にズブズブと没入させられるのが醍醐味と言ってもよい。
ことに最近2周目を見ている「麗」。
どっから見てもラブコメとしか思えないPR画像や予告編だし、本編も序盤は1000年前にタイムスリップしたヒロインが皇子たちにモテまくるエピソードだったりしてまんまと騙されるのだが、あれよあれよという間に「まどマギ」を超える鬱展開に移行。2周目だとその後の展開を知っているだけに最初のハッピーコメディのところから、「このときは幸せだったのに…」と終始胸が締めつけられっぱなし。
いい人が出てくると「ほんとこの人いいひと!」って感動するし、「こいつなんでこんな悪いやつなん!」って悪者にはけっこう本気で憎悪を抱いたりするのだが、そのうち善悪が入れ替わったりすることもあり、感情の振れ幅が大きすぎて心臓や涙腺がキャパオーバーになってしまう。
「キラーズ・オブ・フラワームーン」が神の視点で描かれているとしたら、こちらは精霊の視点なのかもしれない。
人間の感情というのは奥深いものだと思っていたら、「プルートゥ」ではロボットの感情が克明に描かれていたりして、感情は人間の専売特許ではなくて、知的生命体が目的を持って生きていくために必要な機能なのかもしれないと思わされた。