大学の建物の屋上は陽が落ちてしまうと、人もまばらで煙草をくゆらすにはもってこいのスペースになります。夜の授業が休講になったりすると、ひとり思い出に浸りながら秋の少し冷たい風に吹かれます。
ふと見渡せば周りは夕げを楽しんでいるであろう灯りがそれこそ無数にともっていて、東京にいる事実に気付かされます。
不思議なことに全ての灯りは、温かみを帯ていてひとつひとつが平和な家庭であるかのようです。この街には安らかではない時など今までもこれからも訪れることなどない顔をしています。幾つかの窓からねずみ色の三角形の顔が見えています。みんな頭を左にちょっとだけかしげて細い髭をピクッと揺らしました。振り返ると月は半分でウサギの逆立ちしか見えないのです。