「お願いします」
きっちり礼をして中に入る。
まだ誰も来ていないようだったので、先に着替えておこうという話になり練習着に着替える。
着替えを済ませ部室を出るとちょうど先輩たちが来た。
「こんにちは!」
合わせた訳でもないのに4人の声がピッタリ揃った。
「こんにちは。今年の1年生は優秀だね」
「若月先輩、今年の1年生はって何ですか?
それじゃあ私たちが優秀じゃなかったみたいじゃ
ないですかー!」
「そうだね。まいやんを除いて、去年の1年生も礼
儀正しかったね」
「もう、若言い過ぎ。礼儀正しくなかったわけじゃ
ないでしょ。ただまいやはうるさかっただけだよ」
「玲香、それフォローになってないから」
周りの先輩は笑っていた。馬鹿にしたような笑いではなく、心からの笑顔だ。すごく仲がいいのか見て分かる。
「じゃあ着替えてきちゃうからちょっと待ってて。
あ、ボール使ってていからね」
「はい!」
また声が揃ったのは言うまでもない。
みんなですごいねなんて言いながら笑い合う。
そう言えば今からバスケやるのに全然怖くない。寧ろワクワクしている自分がいる。バスケをやろうとすると、と言うよりはボールを触るとなんとも言えない気持ちになる。酷い時には発作を起こしってしまった時もあった。なのに、ナンデ?分からない、、でも、このメンバーなら、このチームならまたバスケができる気がする。
「てち?」
ねるに声をかけられ我に戻る。
「大丈夫?なんか難しい顔してたけど」
「うん、大丈夫」
しっかり目を見て答える。
ふと視線感じると思ったら愛佳がじーっとこっちを見ていた。すごく不安そうな顔してる。
まぁ、そりゃそうか。
「理佐、ボール貸して」
理佐から受け取ったボールをそのままその場でゴールに向かって放つ。
約2年ぶりだし、なにより距離が距離だったので決まるか不安だったけどリングに嫌われることもなくボールはゴールを通り抜けた。これで決まらなかったら意味ないしね。
愛佳を見るとビックリしていた。それで何を思ったのか私に負けたくないと言ってボールを持つ。
そう言えば愛佳ってすっごい負けず嫌いなの忘れてた。
愛佳の放ったボールは綺麗な弧を描きシュートが決まった、と思ったがボールはリングに嫌われた。
「愛佳ださーい」
普通だったら反論するはずなのに黙って俯いている。
「まぁまぁそんな落ち込まないの。今のシュート
フォームもボールの軌道もすごい綺麗だったよ。
スリー苦手なはずなのにあれだもん全然凄いよ」
若月先輩?が言う。
「友梨奈ちゃんは流石だね。まともに練習してない
はずなのに私たちよりも断然上手い」
なんで知ってるの、自己紹介もした覚えないし。
「先輩、友梨奈の顔、すごい警戒されてるけど?」
「え!ちょっと飛鳥、笑い事じゃないよ!
友梨奈ちゃんごめんね?
友梨奈ちゃんと愛佳ちゃんは有名だったから色々
知ってるんだ。過去に総体で10回以上優勝した事
のあるあの坂中で入部早々スタメン、総体でも2人
はフル出場で圧倒的な強さで優勝。でも、それきり
友梨奈ちゃんの名前聞かなくなったから、だから」
「もう昔話は終わりにしましょうよー!自己紹介と
かしてはよ練習したいです!もう友梨奈とやりた
すぎてうずうずしとるんですよ」
「あはは、そうだね。じゃあなあちゃんも友梨奈
ちゃんの手握ってないでこっち並んで」
「はーい」
若月先輩の話を聞いてると急に不安が押し寄せてきた。もしかしたら記憶に繋がることなのかもしれない。そんな時、ななせ先輩が何も言わず隣に来て手を握っていてくれた。
手を離す時も無理しないでねって耳元で囁いていく。
おかげで不安はなくなった。
その後自己紹介をした。
3年生は、キャプテンの若月佑美先輩、
副キャプテンの高山一実先輩、
マネージャーの桜井玲香先輩、
2年生は、橋本奈々未先輩、
白石麻衣先輩、
齋藤飛鳥先輩、
西野七瀬先輩、
マネージャーの深川麻衣先輩。
ちなみに白石先輩と深川先輩はどちらも“麻衣”なので、白石先輩がまいやん、深川先輩がまいまいと呼ばれてるらしい。
自己紹介の後は、私たち1年が久しぶりなのでランニングやパス、ドリブルなど基礎的な練習をした。
『ありがとうございました!』
何も起きることなく無事に練習が終わった。
「おつかれ様」
「由依!いつからいたの?」
「愛佳気づいてなかったの?」
「うん、全然気づかなかった」
「私も」
「てちもか!」
「私も分かったよ、当たり前だけど笑」
「まぁ、ねるはね笑」
「2人ともかっこよかった」
「今日は全然だよ。基本練習ばっかだったし」
「その基本がかっこいいってすごいことだと思う
けどなー」
「、、、ありがと」
「愛佳照れてるー!」
こばがかっこいいって言っても普通だったくせにねるがかっこいいって言ったら照れるとかホントわかりやすすぎるわ。
理佐は分かっててからかってるんだろうな。
「あ、そうだ。さっき愛佳ちゃんが基本練習ばっか
って言ってたけど明日でちゃんと体力とか全て戻
してもらうから。覚悟しといてね」
これ絶対明日きついやつじゃん。
咄嗟にそう覚った。
なぜならそう言った若月先輩がニヤニヤしてるからだ。他の先輩も同じくニヤニヤしてる人もいれば可哀想と呟く先輩もいる。
「先輩怖いです」
愛佳が私の気持ち、いや、私たちの気持ちを代弁してくれた。
「そんなことないよ〜、じゃあ私ら帰るからね〜」
3年生を筆頭に先輩たちはどんと帰って行く。
「私らも帰ろっか?」
こばがそう言いみんな帰る支度を再開した。
あ、一緒に帰れないの言わなきゃだ。
「よーし!じゃあ帰ろ〜」
「ごめん、今日は一緒に帰れないや」