はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、、、
苦しい、辛い。

「車椅子持ってきてー!」

いつからだろう、普通に教室で座って授業を受けられなくなったのは。

「車椅子持ってきたよ。立てるかな?せっーの!」

いつからだろう、教室にいる時間より保健室にいる時間の方が多くなったのは。

「保健室着いたからとりあえずベッドに横になろうね」

いつからだろう、食欲が無くなり夜も眠れなくなったのは。

「一応熱測るね」

いつからだろう、死にたいと願う日々になってしまったのは。

「37.9℃も熱ありますよ。どうしましょう、帰らせますか?」
「んー、とりあえず呼吸落ち着いてから本人と話してみます」
「そうですね、そしたらよろしくお願いします」


呼吸が少しずつ楽になってきた。
またか。また早退か。
私のカラダはいつからこんなオカシクなったんだ。

「齋藤さん、落ち着いてきたかな?」

私はゆっくり頷く。

「熱が37.9℃もあるから今日はもう帰ろうか?」

次は頷かずに静かに見つめ返す。

「このご時世だから熱があると学校側としては早退してもらって医療機関に罹ってほしいんだよね。
だから親御さんに連絡してくるから待ってて」

結局面倒なやつは早退させるのが一番だもんね。

「それなら自分で帰れます」
「え、いや、ダメだよ。一応熱あるんだから親御さんに迎え来てもらわないと」

親なんて呼ばれてたまるか。

「親仕事中で迎え来れないですし、それに、私平熱高いんです。いつも37.5℃とか平気でありますから」

でも、と渋っている先生にもう一度大丈夫ですからと押し切る。

「じゃあ荷物だけ取ってきてもらうように担任の先生に言ってくるね」

はぁー。
もう生きる意味なんかなくね?死ぬか。
そう心に決めて天井を見つめながらぼーっとする。

「飛鳥!荷物もってきたよ!!」

元気な声によって私の意識は現実に戻される。

「大丈夫?」

めんどくさいなぁ。

「大丈夫じゃないか!」

うるさいな。

「飛鳥」

急に声のトーンが低くなった。
奈々未がじっとこちらを見つめてくる。

「死ぬなんて許さいなからね」
「なんで?」
「私が悲しいもん」

そんな自分勝手なと思いつつも少しだけ、ほんの少しだけ嬉しいと思ったり、、。

「そんなの私には関係ないよ。もう生きる意味が分からないの。もう毎日が辛いの。楽になりたいの」

気づくと私はボロボロと泣いていた。

「何が辛いの?何がそんなに飛鳥を追い詰めてるの?」
「理由なんかない!理由があればもっと楽だったよ!でも特にこれといってないんだよ。ただただ辛いんだよ」
「そっか、じゃあ余計辛いね。でも死んじゃだめ」
「なんでよ!」
「だから、私が悲しいからだって」

奈々未はそう言いながら悲しそうな笑みを向けてくる。

「生きる意味がないなら私を生きる意味にしてよ。私のために生きて」
「はぁ?何言ってんの!」
「私は真面目だよ。私のために生きて、私のために笑って」

だからそんなの自分勝手すぎるって!!
人の気も知らないで勝手なこと言わないでよ。
所詮私の事なんかどうでもいいんだから。
私はそう思いながら奈々未を涙で濡れた目で睨む。

「そのかわり、私が責任取るから」
「そんなの意味わかんないよ」
「意味わかんなくないよ、そのまんまの意味だよ。飛鳥が辛いなら少しでも楽になるようにするし、何時でもどこでも電話したいならするし、会いたいって言うなら会いに行くし、学校行きたくないって言うなら行かなくていい、私が教える。将来だってやりたいこと見つけたら惜しみなく援助するし、私が養う。
飛鳥は私の隣で生きてくれればいい、それだけでいいから、私のために生きてよ」


その後ずっと奈々未の胸の中で泣いていた。
さんざん泣いて顔を上げると目を真っ赤に腫らしている奈々未と目が合った。

「飛鳥目すっごい晴れてるよ」
「奈々未こそ」
「飛鳥はこの後早退するんでしょ?」
「うん」
「じゃあ私も早退しよっと」
「え?」
「そんで2人でカラオケいこ!」

奈々未が眩しいほどの笑顔でそういう。
気づいたら死にたい気持ちが無くなっていた。

「飛鳥、さっきの話約束だからね?」
「うん、分かった」


奈々未のために生きる。
そのかわりちゃんと責任とってね。
奈々未が嫌だって、もう無理って言っても聞かないからね。