初めて出会った日を君はまだ覚えていますか?
柔らかいその笑顔を見て君を好きになった日を。

一目惚れなんて初めてで一瞬だった。
君を見た途端、鼓動が速くなり君にもっと近づきたい、君をもっと知りたいって思ったんだよ。
だから私はすぐに行動したんだ。

「ねぇ、バスケ部興味ない?」
「あ、私バスケやったこと無くて…」
「じゃあマネージャーは?」
「マネージャーなら」
「まじ?じゃあバスケ部のマネやろ!
あ、私平手友梨奈、私は中学からバスケやってて高校でもバスケ部入るつもりだからよろしくね」
「はい、あの、長濱ねるって言います。
私運動部初めてで分からないことだらけなんですけど、よろしくお願いします」
「同い年なんだから敬語やめてよ。
大丈夫、ねるが困ってたら私が絶対助けるから」
「うん、ありがとう」

君はなんでバスケ部のマネやってくれたのかな。
私が言えたことじゃないけど、初対面の人に誘われてよくやろうって思ったよね。
普通怖がったりしない?しらんけど。
他に入りたい部活なかったのかな?
決めてる途中だったの?
それとも断れなくて仕方なくって感じ?
そういえば君はずっと控え目だったよね。
それは私だけじゃなくて他の部員にもそうだったね。
先輩はもちろん同じ1年に対してもすごく謙虚で常に一歩後ろに立ってる感じ。
私が告白した時でさえそうだ。
君は自己肯定感がすごい低いんだ。

「ねるのことが好き。
初めて見た時からずっと好き。
私と付き合ってくれませんか?」
「嘘だ」
「嘘じゃないよ、真剣に好きなんだ」
「私なんてのそんな人間じゃないよ」
「私なんてとか言わないで」

ねるの目から一筋、頬を伝うものが見えた。
最初から目にぱんぱんに涙を溜めているのはもちろん気づいていた。

「私はねるが好き、大好きなの。
謙虚な姿勢も、柔らかい笑顔も、真剣にマネの仕事をこなす姿勢も、休憩の時に迎えてくれる優しい眼差しも、たまに魅せる悲しげなその表情も、ねるの全部が大好きなの。
ねるはすごく魅力的な人だよ。
だから私なんてとかそんな悲しいこと言わないで」

ねるは静かに頷いた。

「ねるの気持ちを聞かせて?」
「ごめんなさい、ごめんなさぃ」

ねるの涙はもう止まることなく声を震わせながらただずっと謝り続けていた。
気づけば私の視界もぼやけていた。

「どうして?」

ねるは首を横に振るだけだった。

「理由くらい教えてよ、ねぇ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」

いくら待っても自分の求めてた返答は貰えず、その理由でさえも教えてはくれなかった。

「そっか〜、私はねるの中でそこまでの関係性になれなてなかったってことか〜」
「そんなことはない!
けど、その、ほんとにごめんなさい」

ねるはそのまま帰ってしまった。

次の日から隣の席の君は来なかったね。
ほんとは知ってたんだよ。
君が抱えてることも、いなくなってしまうことも。
知ってたんだ。
職員室でねると先生が話してるのが聞こえてきたんだ。
でもまた戻ってくるって信じてる。
だって私、ねるの知らないことまだまだたくさんあるもん。
何してる時が一番楽しいですか?
何食べたいですか?
どこに行きたいですか?
バスケ少しは興味出てきましたか?
何でバスケ部選んでくれたんですか?
私のこと嫌いですか?
私迷惑でしたか?
次告白したらいい返事もらえますか?
挙げてたらキリないよ。

まだ遅くなりそう?
全然いいけどさ、完全にねる不足だよ。
ねる、ゆっくりでいいから、ずっと待ってるから。
ねるへの思いは永遠に変わらないよ。
だからお願いまた戻ってきて。
告白の返事なんかもういいから、ねるを苦しめてるなら欲しい答えも我慢する。
だから、お願い。隣で笑って。