企業が保有するデータを活用し、新たな価値を生み出す「データマネタイゼーション」。この取り組みが近年ますます注目を集めています。PwCコンサルティング合同会社では、2022年・2023年に続き、今年も国内企業のデータマネタイゼーションの実態に迫る調査が公開されたので読み解いてみました。

データマネタイゼーション実態調査2024 (pwc.com)

 

本記事では、調査結果を踏まえつつ、データマネタイゼーションの最新トレンドと、企業が取り組むべき戦略について分析していきます。データ活用の最前線に立つ企業から学びながら、これからのビジネスを勝ち抜くためのヒントを探っていきましょう。

 

データマネタイゼーションが加速、74.3%の企業が取り組みを推進

調査によると、データマネタイゼーションを「実現できている」と回答した企業は前回から15ポイント増の24.5%、「実現に向けて検討・推進中」も39.0%に上りました。合わせて74.3%の企業がデータマネタイゼーションに取り組んでいる計算です。特に、自社データと外部データを組み合わせた取り組みを行う企業が、全体の51.8%を占めたのは注目すべき点でしょう。

この結果から、企業のデータ活用が新たなフェーズに入ったことがわかります。自社内のデータだけでなく、外部データを取り込み、掛け合わせることで、これまでにない価値を生み出そうとする動きが加速しているのです。データの「社内シェア」から「社外シェア」へ。そのパラダイムシフトが、データマネタイゼーションの新時代を告げていると言えるでしょう。

 

経営トップの強力なリーダーシップがカギ、63.3%が全社的な推進体制を構築

では、データマネタイゼーションを成功に導くカギは何でしょうか。調査では、63.3%の企業が「経営層からのトップダウンの号令」をきっかけに取り組みを始めたと回答しています。全社戦略に基づいて新組織やプロジェクトチームを立ち上げ、全社横断でデータマネタイゼーションを推進する体制を整えているのです。

このことから、経営トップの強力なリーダーシップが不可欠であることがわかります。部門間のサイロを打ち破り、全社的な変革を進めていくためには、トップ自らが旗振り役となって牽引していく必要があるのです。調査対象企業の55.3%が数千万円から数億円規模の予算をデータマネタイゼーションに投じていることからも、経営層の本気度が伺えます。

ただし、経営と現場の間には依然として認識のギャップが存在します。経営層は売上拡大やグローバル展開など大きな価値創出を期待する一方、現場は足元の成果を求められる。その結果、「費用対効果への疑問」が最大の課題として浮上しているのです(37.3%)。ビジョンや期待効果、投資回収のタイムラインなどを擦り合わせ、全社的なコンセンサスを形成していくことが肝要だと言えます。

 

データ先進企業に学ぶ、新たな収益源の創出とデータエコシステムの構築

業界別に見ると、データやデジタルとの親和性が高い通信・メディア(60.8%)、テクノロジー(64.0%)などで、データマネタイゼーションの取り組みが先行しています。これらの業界では、データの外販や分析サービスの提供など、データそのものを収益化する新たなビジネスモデルが立ち上がりつつあります。

一方、製造業や金融業など、従来はデータ活用になじみの薄かった業界でも、脱炭素化や規制対応などを追い風に、データマネタイゼーションへの関心が急速に高まっています。業種の垣根を越えて、データ活用のうねりは着実に広がりを見せているのです。

先進企業の取り組みに学びながら、自社の強みを生かしたデータマネタイゼーションを推進していくことが求められます。加えて重要なのが、企業や業界の枠を超えた「データエコシステム」の構築です。調査対象企業の40.4%が「異分野・異業種を巻き込んだ新たな業界団体やコンソーシアムを立ち上げたい」と回答するなど、オープンイノベーションへの関心の高さがうかがえます。

自前主義から脱却し、多様なプレイヤーとデータを共有・活用し合うことで、単独では生み出せない新たな価値やイノベーションが生まれるでしょう。データを媒介とした企業間のコラボレーションが、ビジネスの未来を切り拓く鍵になると考えられます。

 

結論:データマネタイゼーションの先に見据えるべき未来像

本調査を通じて明らかになったのは、データマネタイゼーションが新たなステージに突入したということです。企業の74.3%が取り組みを推進し、特に外部データとの融合による新たな価値創出の動きが活発化しています。自社データの活用を起点としつつ、データそのものを収益化する新たなビジネスモデルへと進化を遂げつつあるのです。

ただし、経営と現場の意識のギャップ、社内外のデータ連携の難しさなど、乗り越えるべきハードルは少なくありません。経営トップのリーダーシップの下、全社的な推進体制を整備するとともに、外部リソースの有効活用にも積極的に取り組んでいく必要があります。データマネタイゼーション先進企業の取り組みに学びつつ、スピード感を持って変革を進めることが肝要だと言えるでしょう。

企業を取り巻く環境が劇的に変化する中、データの力を最大限に引き出し、新たな価値創造と収益化の機会を切り拓いていく。それがデータマネタイゼーションの本質であり、企業の明日を切り拓く鍵だと私は考えます。自社の殻に閉じこもることなく、社内外のデータを柔軟に組み合わせ、他社とのコラボレーションにも果敢に挑戦する。そんな「データ経営」への転換を図ることができるかどうかが、デジタル時代を生き抜くカギを握っているのでしょうね。