山崎さん
無事地球帰還できてよかったですね。
娘さんのシャボン玉の疑問に対する実験・・・面白かったですね。
さて、
今日は誘導体化について少々。
誘導体化には様々な目的があります。
・ガスクロ分析の前処理
高極性物質等、そのままではガスクロ分析には向かない物質の性質を変え、
逆にガスクロ分析に適した物性に変化させます。
ちなみに、ガスクロ分析に向かない物性として、難揮発性、熱分解性といったところがあります。
・プレカラム誘導体化
これを行うことにより、クロマトグラフィーにおける挙動を変化させることが出来ます。
よって、従来なら、特殊なカラムを使用しないと分離できないもの。保持の出来ないものに対しても、
誘導体化することにより、
一般的に用いられている、逆相カラム(ODS)等による分析が可能となる。
・ポストカラム誘導体化
これは、クロマトグラフィーで分離された物質を、誘導体化させます。
それにより、そのままでは、検出器に対して応答しなかったり、感度の悪い物質を、
その検出器に適した構造をもつ物質に変化させます。
例えば、紫外部に吸収を持たない物質もこの誘導体化により、UV検出器で測定が可能となります。
では、どのような誘導体化があるのでしょうか?
1.メチル化
これは、ジアゾメタンを使ったメチル化が環境分析の世界では主流です。
農薬ではホセチル、ベンタゾン、トリクロピル等
(ベンタゾンやトリクロピルは誘導体化無しでHPLCでの分析も可能)が挙げられます。
飲料水では、ハロ酢酸の誘導体化にもメチル化を用います。
ハロ酢酸を例に挙げると、カルボキシル基-COOHのHの部分がCH3に置き換わります。
ジアゾメタンはCH2N2であり、爆発性、毒性があり大変危険です。
調製方法は、強アルカリ下でN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンを反応させることにより、
発生したジアゾメタンをエーテルに吸収させます。
ジーエルサイエンス等により、ジアゾメタン発生装置が販売されておりますが、
N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンを規程量(132mg)以上いれると、
本当に危険です。
私どもは経験ないですが、たくさんジアゾメタンを調製しようと、132mg以上入れて爆発した
という話をあちらこちらで聞きます。
爆発することがあり、危険です。どうしていますか?
という質問を、
同じ発生装置を使っている方から相談を受けたことがありますが、
聞いてみると、200mg程添加していたとのこと・・・・
説明書に書いてある通りしているだけとしか、答えられません。
注意しましょう。
2.シリル化
クロマトグラフィー分析に用いられるシリル化としては、
基本はトリメチルシリル化(TMS化)を用いられております。
基本は活性基があれば誘導体化が可能で、
アルコール類、フェノール類、カルボン酸、アミン類の誘導体化に用いられます。
飲料水では、フェノー類の誘導体化、
環境試料では、ビスフェノールA,テトラブロモビスフェノールA、ペンタクロロフェノールの分析に用いられます。
シリル化試薬もたくさんありますが、BSTFAあたりが主流でしょうか。
シリル化に限った話ではないですが、OH基のある、弱酸性化合物は吸着性の強さから、
注入口の汚染などにより感度の低下、またそれ自身が汚染の原因となったりします。
また、注入口においてその物質自体が分解するなど、装置の条件、状態によって再現性のある結果が得られにくくなります。
これを解消するのが、誘導体化となります。
3.アシル化
無水フルオロ酪酸といった誘導体化酸無水または酸無水物を用いた誘導体化です。
ヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)、アミノ基(-NH)にアシル基を導入し、
それぞれエステル、チオエステル、アミドに変換します。
炭水化物やアミノ酸のような難揮発性化合物を揮発性化合物に変えると共に、
誘導体化無しでは分離できない成分の分離を可能にしたり、
F誘導体化された試薬を用いることにより、ECDなどの選択性の有る検出器による、
分析も可能となります。
私自身は2,4-及び2.6-トルエンジアミンの分析にアシル化を用います。
等といったところでしょうか、
まだ、他にもイミノクタジン酢酸塩をアルカリ条件下、ニンヒドリンと反応し、蛍光物質を生成させる等、
様々な誘導体化があります。
このあたりも含めて問題点などと共に書いていければと思います。