どういう組織であれ、多かれ少なかれ「組織の内輪の理論」というものがある。フリーランスを10年以上続けているが、何がいいかというと「組織の内輪の理論」に振り回されずに済むのが最大のメリットだと感じている。
組織の理論がが横行するのは、「組織の利益と顧客の利益とは相反するものである」という考え方がベースになっているのではないかと感じることが多い。

私の場合、私自身、私の契約先(常駐して仕事をする先)、契約先の契約先(顧客・エンドユーザー)という、三者の関係が存在する場合がほとんどであるが、顧客から満足感を得られなかった仕事というのはほとんどない(*1)。私自身が契約先内の都合や理論よりも顧客の問題解決に力を尽くすからだろう、と思う。

そういうことをやると、私の契約先の担当としては自分の立場がなくなるので面白いはずがない。そうなってくると「あいつは目障りだ」と、契約先の担当が契約を解除する方向で動き出すケースが結構ある。今までもさんざんその目には遭ってきた。

2つほど例を挙げると
【その1】
 ある旅行会社の子会社での携帯サイトの構築に関する提案の件。前担当が厳しいと評判の顧客先社長向けプレゼンに四苦八苦しており、私に提案資料作成とプレゼンの仕事が回ってきた。そこで顧客サービスとしてどう企画し薦めていくのかと、そのための技術的な裏付け等を資料化してプレゼンに臨み、その場で出てきた意地悪な質問にもよどみなく答え、契約先社長から「顧客の社長が絶賛していた」という話を聞いた。(その場で元の担当者も自分の地位を守りたかったのか「こういうことでよいですよね」とか自分も分かっていたんだということをしていたが、顧客の社長に否定されていいた。)
 その後、元の担当者からまともな情報が入ってこなくなり(重要な部分を貰えなかったり、間違った情報を渡されたり・・)、携帯サイトの構築プロジェクトの終了を終える頃に契約を切られた。顧客の担当者は随分と残念がっていた。
 少なくともメンテナンスはうまくいっていなかったように、元の仕事仲間から聞いた。

【その2】
 ある企業のアウトソーシングを請け負った、子会社も山ほどある超大手ベンダー。私はPMO要員として入り、顧客との重要な会議への参加も、事務的な雑用もすべて行わないといけない雑用係であった。
 顧客と契約先との企業文化が大きく異なるのは日々感じていた。客観的に見て、業務の進め方やセキュリティに対する考え方、納期の厳しさ等は顧客の方が上をいっていた。しかし、契約先はそのことに気がついていないのか、頑なに自分たちのやり方を変えようとしなかった。
 いろいろと助言しても聞く耳を持たなかったが、ある時プロジェクトの上層の人が私のPMの経験とPMP資格保持者と言うことに目を付け、私をプロマネかその補佐にしようと話を持ちかけてきたが、私の直属の上が断っていた。
 面倒くさい仕事は概ねこちらに回ってきていたが、その頃からそれに対し難癖をつけられるようになってきた。で、しばらく後に交代要員を入れ、しばらくの引き継ぎ期間を経て抜けることになった。
 私の後任となった人は今では飲み友達であるが、当初は「いい加減な奴がいるから替わって欲しい」と聞かされていて着任したものの、3日で「俺よりあいつの方が仕事はできるので、俺は抜ける」と断ったそうだが、交代は既定路線だったようで・・・。
 まだプロジェクトメンバーとして残っている人ともたまに飲むけれど「私や私の後任が抜けた後、半分くらいの仕事は社員が引き取っているけれど、ホント使い物にならない!」と怒っていた。


 「出る杭は抜かれる」をさんざん経験してきた訳であるが、契約先の判断なので構わない。しかし、それが内輪の理論によるものなら誰も幸せにならない。現に、私を追い出した後、その2で紹介したようにもっと非効率になるケースもあるが、ほとんどはプロジェクトが崩壊してしまうようである。小さい会社だと倒産しているところも数社ある・・。

 抜かれるには「自分はこういう立場で、これだけの効率化や収益を上げた」というような主張を一切しないから、ということもあるのかもしれない。ただ、そういう事を主張してまで残りたいとも思わないので、素直に抜かれるようにしている。自分の理念や考え方を曲げてまで、力を貸したいとは思わないからだ。


(*1) 顧客から満足が得られなかったケースもある。ある顧客内で複数の業務を受け持っていた際に、あるひとつの業務の顧客側担当者だけが「組織の内輪の理論」を強く振りかざしたケース。外注=奴隷とでも思っていたのではないか?ということで、当時の私の契約先もそれにはキレて申し入れを行った、というのがあるかな。