毎日のご飯を炊くことが重労働だなんて思った人は、この21世紀においてまずないでしょう。それは、お米を洗って炊飯器にセットし、ボタンを押せば30分後においしいご飯が炊ける電気炊飯器があるからです。しかし、今から65年前は違いました。
1950年代前半の朝の台所。家族の中でだれよりも早く起きてご飯の準備をするお母さん。お釜でお米を研いだら、かまどにお釜をセット。薪に火をつけてご飯を炊きます。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ、じゅうじゅうふいたらひをひいて、ひとにぎりのわらもやし、赤子ないてもふたとるな」
これは、「初めは弱火、次に中のお米が飛び散るくらいに強火にして、吹きこぼれてきたら少し火を弱め、最後にワラを燃やして追い炊きし、その後じっくり蒸らす」という、ご飯を炊く時の複雑な火加減を示しています。火加減を誤ると、ご飯が生煮えになってしまったり、強く焦げてしまったりして、食べられるようにはなりません。お母さんの役目は大変です。毎日毎日、3食とも家族がご飯を食べられるように、想像を絶する苦労をしていたことでしょう。
そんな、重労働から主婦を解放しようと、当時の東芝が、町工場に電気炊飯器の開発を依頼しました。開発は苦労の連続でした。何しろ、ご飯を炊くためにはあの複雑な火加減が必要なのです。単純にある温度で電源が切れるようなサーモスタットでは、とても上手に炊けません。大量の米を購入し、家族総出で開発実験を繰り返しました。途中で奥さんが倒れてしまうなどの困難もありましたが、内釜を2重にして、その隙間にコップ一杯の水を入れ、間接的に加熱する方法が開発されました。こうして、ついに世界初の自動電気炊飯器が誕生します。


