チェックランプが点灯したそうです

 

 日  付    ハイオク    レギュラー   軽   油 
5月22日 175円/ℓ 164円/ℓ 140円/ℓ
 

- もくじ -

 

 


◇ チェックランプの点灯

今回は、姉妹店から「突然チェックランプが点灯したので見てほしい」という依頼でお預かりした車体の整備をしていきたいと思います。

 

一昔前はメーターパネル内で点灯するチェックランプと言えばコレでした。

今でも点灯する事はありますが、最近めっきり見なくなったような気がします。

 

現在販売されている車体はチェックランプだけでも数種類あり、大半は運転支援装置に関する物になります。

 

今回入庫したスペーシアは、走行中突然チェックランプが点灯したそうで、いろいろ調べてみたが原因を特定できなかったという事です。

 

今回は姉妹店からの依頼なのであまり儲かりませんが(笑)、原因を調べて修理をしていきましょう。

 

それでは、スズキ/スペーシアのチェックランプ点灯修理、開始です!

 

 


◇ 原因の究明

それでは原因を探していきたいと思います。

 

先ずは点灯しているチェックランプを確認しましょう。

はい、まるで祭りでもやっているかのように賑やかに点灯していますね。

 

今回問題になっているのは①~⑥までの番号を付けているランプです。

 

最近の車体の傾向として、何かしらトラブルが出た時に複数のランプが点灯する事が多いです。

 

今回は運転支援装置に係る箇所に問題が出ていることが伺えます。

 

それではどんなエラーが出ているか中身を確認してみましょう。

コンピューターを繋いで確認していきます。エラーの項目に番号を付けています。

 

画面に表示されている項目に、DTCと出ているとエラーがあるという事です。

上の写真と合わせて合計4個のエラーがヒットしました。

 

この中の②のエラーはキーレスリモコンのバッテリー残量のお知らせなので無視しても大丈夫です。

 

③と④は運転支援装置のエラーですね。このエラーが出ていると自動ブレーキやレーンキープの機能が使えなくなっている状態ですね。

 

運転支援装置のエラーは事故などで車に衝撃が加わった後や、フロント周りにあるセンサーやカメラ類の取り外しを行なった時、又は運転支援装置のエーミングを途中でやめてしまった時に出るエラーです。

 

事前のヒアリングではエーミングは行っていないそうなのでそれ以外の原因がありそうです。

 

センサー類にトラブルが無いと仮定すると、次に怪しいのが①のABS/ESPエラーです。

 

このエラーは車輪の回転数をコンピューターが把握できなくなった時に出るエラーです。

 

先ずはこのエラーから確認していきましょう。

こんな内容が確認できました。

 

左前輪の回転センサーが何らかの異常があるようですね。

 

念のため他のエラーの中身も見てみましょう。

他のエラーはブレーキコントロールに関するエラーのようですね。

 

ブレーキコントロールもホイールの回転数を計測しているセンサーデーターを活用していますので、その辺りに原因があるようです。

 

という事で、まずは一番怪しいエラー①を潰していきましょう。

 

チェック項目として初めに回転センサーを点検していきます。

 

この型のスペーシアの場合、4輪全てに回転センサーが付いているのでそれらを全て確認していきます。

 

確認方法はテスターで導通チェックですが、それが一番単純で簡単な確認方法です。

 

確認したところ4輪全てのセンサーで同じ抵抗値が出ていたので、センサーのトラブルでは無さそうです。

 

次に車体側の配線をチェックしていきます。

 

初めにトラブルが出ていると思われる左前輪からテストしてみると・・・

 

テスターの針が動きませんでした。

 

何度テストしても針は沈黙したままでピクリとも動きません。

 

次に右前輪の配線をテストしてみると、ちゃんと抵抗値が計測できました。

 

念のため後輪も左右で計測しましたが右前輪と同じような計測値が確認できましたので、今回の故障原因は配線のトラブルにより、左前輪の回転数が車輌コンピューターに入力されていない事が原因という事になります。

 

故障原因も特定できましたので、次は配線のどの部分にトラブルがあるのかを調べていきます。

 

回転センサーからコネクターまでの間で断線してくれていれば良かったのですが、今回は回転センサーは問題ありませんので、車体側の配線の何処かにある問題部分を探し出さなければなりません。

 

最悪、配線の交換という事になりますが、そうなると交換費用はかなりの金額になる可能性もでてきます。

 

被膜された長い配線の中から不具合箇所を特定するのは簡単な事ではありませんが、とにかく探していくしか方法はありません。

 

何時終わるか解らない気の遠くなるような作業が待っていることを考えるととても嫌な気分になりますが、異常個所を探し出すまでは仕事が終わりません。

 

落ち込んでいく気を何とか持ち上げて、とりあえず異常個所の探索を開始します。

 

まずはセンサーコネクターを取り外した部分から確認していきます。

このコネクターの先に回転センサーが接続されています。

あ、異常個所がありました。配線の外被膜に亀裂が入っています。

 

よく見るとフロントバンパーにパテ跡と塗装痕があるのでフロントバンパーを修理しているようです。

 

おそらくバンパーを破損させた時に配線を何処かで噛みこんでしまったのでしょう。

 

ともかく、長い旅になると思われた作業は、開始5秒で終わることになりました。

 

それでは原因の特定に移りましょう。

 

まずは配線の外被膜を取り除きます。

原因が判明しました。青い方の配線が断裂しています。

 

今回のエラーの原因はコレでも違いないでしょう。

 

しかし、原因がコレなら突然チェックランプが点いたという証言には無理が生じますが・・・

 

まぁそんなこともあるという事にしておきましょう。

 

それでは、原因も分かったことですし早速修理に取り掛かります!

 

 


◇ 修理です

今回の修理方法は、断線した配線を繋げることにしました。

 

運転支援装置に関わる配線なので本来なら交換する事が望ましいと思いますが、単純な部分の配線なので結線で対応したいと思います。

 

結線方法は色々ありますが、今回はコレを使って結線していきます。

この部品、結線用のパーツになります。

 

ピンク色の筒の中に金属の筒が入っている構造で、配線の先端部分の被膜を5mm程除去してから金属の筒の中に配線を差し込み、金属の筒を専用工具で潰して結線するパーツです。

 

説明するより見た方が早いのでご覧ください。

 

断線していたのは青い線でしたが、赤い線にも圧迫痕があり少し怪しかったので両方とも結線しなおします。

赤い配線に少しダメージがあるのが解りますね。

 

それでは作業開始です。

 

こんな工具で結線していきます。

まずはコネクター側から。

両方の線を結線しました。

 

次に、このピンクの筒にヒートガンで熱を入れていきます。

熱を入れる前は結構ガバガバの状態です。

ヒートガンで熱を入れていくとこのようにピンクチューブが収縮します。

 

この時に、ピンクチューブの内側の樹脂が溶けて配線に絡みつく仕組みになっています。

 

実は今回このパーツを使った理由があります。

 

このパーツのメリットは、内部の樹脂が溶ける事で水濡れに強い結線になるのです。

 

足回りの配線だけに水濡れでサビが出る事で接触不良になる恐れがあるため、今回は水濡れに強い結線方法を選んだという訳です。

 

熱を少しづつ入れて、最終的にはココまで収縮させれば完成です。

見えにくいですが、ピンクのチューブの内側の配線に溶けた樹脂が絡みついているのが解るでしょうか?

 

仕上げに元々付いていた外側の配線被膜と、配線用のビニールテープで仕上げて完了です。

はい、こんな感じになりました。

 

最後に取り外したバンパーを取り付け、作業完了です。

 

 


◇ まとめ

作業が完了したので、最後にもう一度コンピューターでエラーをリセットしていきます。

 

エラーを残したままにしておくと新たに出たエラーを隠してしまう恐れがあるため、修理後は全てのエラーをリセットします。

全てのエラーを消去するためリモコンの電池も交換しておきました。

荒ぶっていたメーターパネル内のチェックランプも綺麗に居なくなりましたね!

 

念のため走行テストも行い、再点灯などの問題も出なかったので全ての作業を終了とします。

 

それでは今回のまとめです。

 

今回は姉妹店から入庫した車体でした。

 

入庫の際に行ったヒアリングでは、姉妹店で点検できる場所は全て点検し、コンピューター診断も行った上で原因が解らなかったという事で入庫した訳です。

 

しかし、原因はとても単純なモノでした。

 

別に姉妹店を攻めている訳ではありません。

 

メーターパネル内に出るチェックランプの原因を探る上で重要なのは、故障探求に対する慣れです。

 

コンピューターに表示された項目を一から順に潰していけば答えにたどり着く筈ですが、ガソリンスタンドに従事している整備士は店頭業務も兼任しているため中々探求に費やす時間が取れないのです。

 

お客様に給油方法を教えて欲しいと呼ばれたり、タイヤの空気圧を見て欲しいとお願いされたり、電話が掛かってくれば電話にも出なければならず、迷子が居れば保護もしなければなりません。

 

他にもカードやアプリをオススメしたり、手洗い洗車をしたり、車を販売したり、パンクした車のレスキューに行ったり、オイル交換やタイヤ交換をしたり、お店の掃除をしたり、レンタカーの点検整備や貸渡業務をしたりもしています。

 

なので、ガソリンスタンドの整備士は多岐に渡って仕事をこなすという特性上、どうしても故障探求に使える時間が少ないのです。

 

結果的に時間のかかるチェックランプの故障探求や、エンジンやミッションの脱着等、作業時間が長くなる仕事は外注に出すことが多いので、その手のトラブルの修理が苦手な整備士が多いのです。

 

つまり、簡単に言えば私がヒマなだけですね(笑)。

 

という事で、スズキ/スペーシアのチェックランプ点灯点検修理、完了です!

 


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