冬のある夜のこと。勤務中の私に小学生位の男の子が話しかけて来ました。たまに
お母さんと一緒に買い物くる子なんで見覚えがありました。
泣きながら何かを訴えてきますが何を言っているのか良くわかりません。
パンパンに膨らんだリュックを背おってました。それを見てなんとなく事情を察した私は
事務所に男の子を入れて、まずは落ち着かせようとしました。
何か飲む?ご飯は食べた?ポケモンやってる?など、男の子の様子を見ながら、
子供が好きそうな話をしていきました。正直、何を話したらいいのかわかりませんでし
たが、やがて男の子が笑顔を見せるようになってきました。
そーとー疲れました。ですが、一安心です。
もう一回、何があったのか教えてくれるかな?
男の子は一瞬、暗い顔になったように見えましたが話してくれました。
歳は9歳で名前はH。母子家庭であること。お母さんに食事が遅いと怒られて、公園で寝泊まりしてろとか、何とか言われて本当に出てきてしまったとか…
まあ事情は分かりました。お母さんも本気で言った訳ではないでしょう。
さて、ここからは何らかの対応をしなければなりません。
最終的には警察に連絡するしかないのですが、昨今、児童虐待や然るべき機関の不手際のニュース等目にしており、慎重に対応しようと思いました。非常にデリケートで難しい事案かもしれませんので。
まずは本人に聞いてみます。
お母さんは好きかい?男の子は好きだと答えました。少し安心。
じゃ、おうちに帰ってお母さんと仲直りできるかな?
それは絶対にダメ。絶対帰らない。殺される。そう言うとまた泣き出してしまいました。
凄く不安になりました。殺されるって…
そんなことされないよ、大丈夫だよ、恐いならオジさんが一緒に行ってあげるから。
絶対ダメって言われました。
じゃ警察の人に一緒に行ってもらおう。
それも怒るからダメ!
そのうち男の子は袖をまくって私に腕を見せてきました。切り傷の跡があります。
もう嫌な予感しかしません。
虐待の跡のようです。
包丁で切られたと言っていました。
私はもう涙目、鼻水ズルズルです。可哀想過ぎる。なんでこんな小さな子が…
これからどうしたいのか聞いてみました。
今日は公園で寝て明日親戚の人に迎えに来てもらう的な事を言いました。
よくよく話を聞くと、親戚の連絡先が書いてある紙とテレカを持っていました。後から気づいたのですが、このテレカの使い方が分からず、お店で電話を借りようとしていたみたいです。
とにかく電話をして事情をお話しました。相手は男の子のお母さんのお父さん。つまり
おじいちゃん。明日迎えに行くから、一晩お店に泊めてほしいとのこと。
いやいや、すぐに迎えに来てくれよ!
それが無理ならそっちから親に連絡してくれよ!既に男の子が来てから1時間半ぐらいたってるし、捜索願も出ているかもしれないし!何!えっおじいちゃん山口県なの⁉
ここ東京です。すぐは無理ですね。じゃ電話を…話を聞く娘じゃないって?
どうしたらいい?何が最善?わからん。ここでようやくオーナーに連絡を入れました。
オーナーはすぐ店に来ました。そしてだいたいの事情を聞くと、すぐに警察に連絡しました。
警察もすぐに来ました。案の定、捜索願いが出されていました。男の子は泣きそうな顔で警察
の方に連れられて行きました。最後に店の入り口で振り返り私と目が合いました。私は駆け寄り、泣きながらハグしました。頑張れ!それしか言えませんでした。
翌日、私は休みでしたが、ずっとモヤモヤしてました。何が正解だったのか考えていました。
あの後、オーナーともこの話をしましたが、
今回の場合、我々に出来ることはほとんど無い、だからなるべく早く警察に連絡するしかない。
と、言われました。なるほど、私は何もできなかったし、代案も無かった。納得はできないけどそれが正解だったのかもしれない。
とにかく貴重な経験をした事は確かなので、次があればもっとうまく対応したい。
男の子は翌日おじいちゃんが迎えに来て山口に行ったそうです。今日まで店には来ていま
せんので、まだ向こうにいるのかもしれません。
お母さんの方はよく一人で買い物に来ています。
何か暗くて重い話になってしまったな~次回からはもっと軽めに行こう!