獣医から戻ってストーブの前に寝かせたプーは、もう骨と皮ばかりになっていた。
プーの話②の画像でも見て取れるが、顔つきがキツネっぽくなっている。
猫相がすっかり変わってしまった。
毛並みもベタベタでボロボロだ。
獣医は「今夜ぐらい(に亡くなる)でしょう」とおっしゃっていた。
私はしっかり見届けようと思った。

その夜、プーを可愛がっていただいたお隣のご一家が最後のお別れに来てくださった。
とてもありがたかった。
正直に書くが、その一方で、もう私とプーだけにしてくれないかな?とも思った。
死に向かっているのに、プーを強くしつこく触らないで欲しかった。
何だろうこの傲慢さは。でもそれがその時の気持ちだった。
コダマは相変わらず「アタシ知らんもんねー」状態でマイペースに過ごしている。ま、コダマはそれでいいのだ。

私が恐れていたのは尿毒症のケイレンだ。
プーではまだ見たことがなかったのだ。
私の留守中にケイレンが起きていたのかもしれない。
当時調べたところ、ケイレンの対処方法は「静かに見守ること」だった。
そんなことできるのだろうか。
私は自信がなかった。
夜中の2時頃、横たわっていたプーが突然起き上がろうとした。
ケイレンか!?と思ったが違う。
プーはなんと立って歩こうとしていた。
もうそんな体力は残っていないので倒れてしまう。
なのにまた立ち上がって歩こうとする。
プーは倒れたまま不思議そうだった。
「のりりん、私歩けないわ。どうしてどうして?」
と言っているようだった。
プーはなかなか亡くならない(こういう書き方はアレだが)。
4時頃、泣き疲れて眼のまわりが倍ぐらいに膨らんだ私は、一旦寝ることにした。プーをそっと右腕で確認しつつ、一緒の布団で寝た。
コダマは私の左腕側にもぐり込んできた。
3時間後に目覚ましをかけた(はずだった)。


目覚ましは鳴らなかった。
目を覚ますと朝の9時だった。
プーは私の右側で息をしていなかった。
既に硬直が始まっていた。