コダマの異変は突然やってきた。

コダマは当時17歳のおばあちゃんで、私と平和にのんびりと暮らしていた。
マイペースな猫と飼い主で、お互い手間もかからず空気のようだった。
一泊ぐらいなら、コダマは平気でお留守番ができた。
コダマの食欲は落ちる様子がなかった。
エイズ発症もなく、この調子ならもう漢方薬を飲ませるのをやめようかと思った矢先のことだった。


ある日帰宅してコダマのご飯皿を見ると、カリカリが減っていない。
「あれー?今日は食べていないのね。でも好物のホタテは食べるでしょ?」と毎晩あげていたホタテの刺身を熱湯にとおして細く裂いたものを与えた。
コダマは匂いをかぐだけで食べない。
「遂にきたか・・・」と思った。
ホタテを食べないコダマなんて有り得ない。
つまりもう食べられないということだ。
水もあまり飲んでいない。
鶏スープを作って口元に持っていってもほとんど飲まない。
強制給餌はしないと決めていた。
私はご飯やトイレ(環境)を整え、コダマに任せて見守ることにした。
それはこの日から一週間続いた。