ある朝、このままプーを家に残して会社に行くわけにはいかない状態になった。
会社もそうそう休めない。
「(最後の)入院をさせよう」と思った。
私の不在時に亡くなってしまったら嫌だ、帰宅してプーが死んでいたらどうしようと思ったのだ。
今となれば、一人暮らしだからそういう事態も仕方のないことだと分かる。
だが当時の私はそこまで腹をくくれていなかった。

思えば最初は気軽に飼ってしまった猫達だった。
飼う時には死ぬことまで考えていなかった。
ばかばか。
獣医に事情を話してプーを入院させ、会社に向かった。
その2日後の昼前に獣医から電話があった。
「プーちゃんの腎臓はもう動いていません。(亡くなるのは)今夜ぐらいでしょう」
あわてて上司に事情を話し獣医に向かった。
当時の上長は笑って許してくれた。
ありがたい話だ。
入院先の獣医でプーは力なく横たわっていた。
4kgあった体重はすでに2kgを切っていた。

子供のようにグズグズ泣きながらプーと一緒に家に戻った。
2月末の雪の残る寒い日だったが貸家の縁側でプーをキャリーから出した。
大好きな庭を見たいだろうと思ったのだ。
プーはよろよろとキャリーから這い出し、縁側をぴょんと降りた。
そんな力が残っていたのか!?と驚いたが好きにさせた。
プーは玄関前の落ち葉の残る冷たい地面に横たわり、じっとそのままでいた。
プーの大好きだった場所だ。
「こんなに寒いのに、日陰なのに・・・」と私は気が気でなかったが、しばらくそのままにさせた。
猫は具合が悪くなると寒い場所を好むと言う。
一方のコダマは相変わらず我関せずという感じだった。
いい加減私が寒くなり、プーを家に入れ、ストーブの前にプーを寝かせた。



これはストーブの前に横たわり、近づけた私の指を両前足でギュッと握ったプーの画像だ。
嬉しく悲しくせつない場面だった。
何もできない私は号泣するしかなかった。