腎不全のプーは目に見えて弱っていった。
獣医ではお決まりのステロイドを処方された。
獣医に悪気なんかあるわけないのだ。
でもステロイドを与えると一時は効くが、その後は倍のスピードで弱ってしまうのだ。
ステロイドは体力や元気のある猫には効くと思う。
しかし弱っている猫には・・・自然に衰弱していく方がマシだと思った(後年コダマとの比較でそう確信した)。


私は仕事をしていたので日中はプーとコダマでお留守番。
ケージを買い、寝袋と小さなトイレとご飯と水を入れ、プーを寝袋に入れて出勤した。
日中会社や客先に居ても心配で心配で、こっそり泣きながら仕事をしていた。
仕事が終わるとすっ飛んで帰り、プーの生存を確認する毎日だった。

私に初めて突きつけられたペットの死。
実家では動物を飼う余裕はなく、東京に出て来て一人暮らしで働いてお金をため、念願だった猫を飼ったのだ(とはいえプーもコダマも偶然うちに来た野良猫の産んだ子供だったのだが)。

まさかプーが死ぬ瞬間が来るとは思っていなかった。
冗談ではなく私は本当にそう思っていたフシがある。
ばかばか。
弱ったプーを入院させ、少し良くなって退院し、また弱っていくのをただ確認する毎日が続いた。
冬の寒い日、弱ったプーと一緒に布団で寝ていた時、プーが私にしがみついてきた。
どうしたんだろうと思った。
プーは私にしがみついたまま私のパジャマに「チー」とおしっこをした。
おしっこが温かくてなんだかせつなくなって号泣してしまった。
「おしっこ出たねー」と言いながらパジャマを着替えている私をプーはじっと見つめていた。

プーを可愛がってくださった隣の奥さんが、
「プーちゃんよかったねー。やっとのりりんさんがプーちゃんだけのものになったねー」とおっしゃったのが忘れられない。