この「シン・二ホン」というのは、日本の構造的な競争力の低下を憂いて、今後の方向性を提案している本です。大変示唆に富んだ内容なので一度読んでみることをお勧めします。
昨今話題の人工知能(AI)技術に関して、日本の層の薄さを特に指摘しています。背景には、日本における博士軽視の風潮があります。文科省の研究予算の配布が競争的資金に比重が高くなり、長期的な研究がしにくくなっているのも一因です。日本の最高学府と言われる東京大学でも、世界レベルで論文のインパクトで見ると10位以内に入っているのは物理分野だけで、計算機科学は100位にも入っていないそうです。世界は博士の学位を持った人材が中枢で活躍しているのに、日本にはその博士レベルの人材が圧倒的に少ないという問題があるようです。ただ、これは、私見ですが、日本人の頭が悪いと言うわけではなく、博士人材を生み出す仕組みが、世界と比べて劣っているということだと思います。たとえば、5章にかかれているのは、アメリカの大学の資金力の豊富さです。日本の大学とは圧倒的に違う豊富な資金をもっています。主に基金の運用によるものなのですが。あと、博士課程の学生には、学費+年400万円くらいを支給しているらしい。これは、日本の大学とは大違いで、相当な差が付くのは明らかです。
また、妄想力を持った異質な人材を活用できる社会になる必要があるとも指摘しています。これは、結構色々な人も言っていると思いますが、同質な社会ではなく、複数のベクトルを持った人材の融合から新しい日本の将来が組み立てられていくのでしょう。
何か閉塞感のある日本社会・日本経済ですが、若い人材・世代への投資を進めることを強調しています。日本という国が豊かさを維持・発展できるような社会に変えていく必要があります。その意味でも、貴重な示唆が得られる良書だと思います。
