暫くして携帯が鳴った。
携帯の画面に修一の名前が…。
マナーモードにはなっていてもバイブの音が玄関にまで聞こえるのではないかと思ってしまうほど、家の中は静まり返っている。
私は布団に携帯を押し付けてバイブの音が少しでも小さくなるよう必死だった。どれくらいの時間が経った頃だろうか…。
ピンポーン。
玄関からチャイムノ音がした。
「安住さん。僕です。ほんだです。いらっしゃいますか?」
豊の声がした。
来てくれた!
私は急いで玄関に向かった。
玄関のドアを開けると、
豊が玄関の前に立っていた。
視線を少しずらした場所に修一が立っていた。
私はとっさに
「ほっ…本田さん、どうしたんですか?」
と声をかけた。
「あれ!?仕事の手伝い頼んでましたよね!?」
「あっ!?あー…。すみません。忘れてました。」
「会社で待ってたんだけど、安住さん来ないから、室長にお前呼んで来いって言われちゃいましたよ!?」
「すみません。直ぐ出ます。」
「美樹!いたんなら何故出てくれなかった!」
「ごめんなさい。話をすることはもう…。」
「待てよ!!」
「あの、すみませんが、彼女は今から僕と仕事に行くので改めていただけませんか?」
「あー!?そう言えば思い出したぞ!お前あの時も邪魔したな!?お前美樹の何なんだよ。」
「僕ですか?本田豊と言います。
安住さんは僕のとても大事なパートナーです。」
「今日は土曜日で休みのはずだ!そっちが遠慮してくれないか!?俺は美樹と大事な話がある。」
「修一…だから話す事は何にも無いって言ってるでしょ!」
私は思わず声を荒げてしまった。
修一は私の腕を掴もうとした。
「彼女に触るな!!」
「本田さん!」
私を庇うように豊が私の腕から修一の手を払い退けた。
「あんたには関係ないだろ!」
「いや…彼女は僕の妻になる人だ!!
あなたの事は僕も彼女から聞いてるよ。戻るつもりはない…ってね!
悪いが帰ってくれないか?」
「美樹…お前…。
そうか…そうだったんだ。こんな若い奴と…。
お前ならやりかねないな!さぞかし楽しませてくれるんだろうな!?
お前…俺とのセックスに飽きたんだな!
まっ!せいぜい捨てられないようにその体磨けよ!?
捨てられてから俺とやり直したいって泣きついてきても知らないからな!?」 「あなたに心配されなくても、彼女は僕が守る!!
これ以上侮辱するなら僕にも考えがありますよ!」
豊は静かにだけれどどこか凄味をきかせて言い放った。
舌打ちをして修一は帰って行った。
「もう大丈夫だ。」
「あ…ありがとう…。」
私は涙で言葉に詰まりながら言った。
「喉乾いた…コーヒー飲みたいな…。入れてくれる?」
私は頷いて家に入った。
玄関の鍵をカチャッと締めると豊は私を抱きしめた。
「緊張した~」
私を抱きしめている腕が小刻みに震えていた。
私はそんな豊にしがみついた。
「震えてる…。」
「必死だった…美樹を連れて行かれないように…」
そう言って私にキスをした。
私達はそのままベッドまでどちらからともなく吸い込まれるかのように倒れこんだ。
豊の激しい息づかいが私の首筋を這い、しなかやかな指は私の乳房をなぞった。私の体が敏感に反応しピクン!と波打つように仰け反った。
「美樹…。君はここが弱いんだ…」
私の胸を必要にせめる。
「あっ…、いやっ!いじわるしないで…。ゆっ…ゆたか…」
私の中に入って波うつように豊は果てた。
私の髪を優しく撫でてくれる胸の中で呟いた。
「前髪を1㎝短くするわ。」
「どうしたの急に!?」
「あなたの顔がよく見えるように…そしてあなたから私がよく見えるように。」
「うん。そうだね。切ろう!」
私達は微笑み合いまた唇を重ねた。
完。
豊は私を愛しむ様にやっと手に入れた宝物のように優しくゆっくり時間をかけて…。
その唇は体中わ熱くトロけるように…。
その手は髪を鎖骨を胸を腰を柔らかな布の上を滑らすように…。
何も考えられなくなってしまうほど、しっかり背中に手を絡ませないと底無しの快楽の渦に堕ちて戻れなくなりそうな程甘美な一時。
朝。
私は熱も下がり、朝食の支度をしていた。
「本田さんは和食?パン?どっちだろう?」
どちらでもいいようにハムエッグと生野菜とオニオンスープ。
「おはよう、美樹…。
目が覚めたら横にいないから心配したよ。」
後ろから突然抱きしめられた。
「仕事に遅れちゃいますよ。支度してありますから着替えてきて下さい。」
「もう忘れてる。」
「えっ!?」
「二人きりの時は敬語は無しだろ。」
「まだ慣れなくて…。」
「ああ、何で僕一人仕事なんだろうな~。」
「一人で?管理者皆じゃないの?」
「本社に出す報告書締め切りに間に合わなくて…。」「締切って何時?」
「月曜日に本社に届けるんだ。」
「それで出張なんだ月曜日。」
「僕はこうして一日、美樹と一緒にいたいんだけどな!」
私の首筋に顔を埋めた。
首筋に熱い吐息
「んっん…!」
「そんな声出されたら止まんなくなる…。」
「あんっ…だっ…ダメよ。仕事行かなくちゃ!」
「一人きりでかい?」
「お弁当作って後から私も行くから…ね!?」
「ボント!?」
「うん、さっ食べて支度して!」
「じゃぁさ、終わったらドライブ付き合ってよ!」
「ドライブ?」
「ダメ…?」
「了解。」
「やった~!」
子供みたいに喜んで、支度を始めた。
朝食を済ませた豊を送り出した私は約束したお弁当を作るためにキッチンに立った。
一時間時間をかけてお弁当を2人分作り終えた私は、シャワーを浴びて支度を始めた。
シャワーから出て鏡の前に全裸で立った自分の姿を見てため息をついた。
若い子達とは比べ物にならないくらい弛んだ体の私を見てがっかりしなかっただろうか…。
鏡の自分自身の姿に昨夜の熱い一時を思いだし、体がジンと熱くなり、赤みを帯びてまるで初めての時のような恥じらいすら感じている私がいた。
今すぐ抱いてほしいとせがんでしまいそうに高まっていた。
ピンポ―ン。
玄関のチャイムが鳴った。
誰だろう…。
ドンドン!
「美樹!俺だ!いるんだろ!?開けてくれよ!」
修一…。
どうしよう…。
私は携帯を手に寝室に向かった。
豊に電話をかけた。
「もしもし、美樹。どうした?」
「今出掛けようとしたんだけど、修一が部屋の前に来てるの、どうしよう…」
「落ち着くんだ、僕がノートパソコンを持って今すぐ会社を出るから、僕が行くまで絶対に玄関開けちゃダメだよ。寝室にじっとしているんだ、わかったね。」
「うん…。はっ…早く来てね。」
「わかった!」
電話を切った私は、寝室の扉を閉めてベットに潜った。
「美樹!話をさせてくれないか!?君が開けてくれるまでここを動かないから。」
そう言ったきり声は聴こえなくなった。
咳が止まらなくなった私。家に来ていた本田さんが、お水を私に持ってこようとした時、私が「行かないで!!」と苦しい呼吸で口にしてしまった。
何故そんな事を言ったのか自分でもわからず…。
それが本田さんに火を付けたのか、本田さんは私を抱きしめてキスをした…。
「安住さん、僕がついてるから大丈夫だから…。」
私はわけもわからないまま泣いていた。
私の髪を撫でながら本田さんはずっと自分の胸をわたしにかしてくれていた。
「今度の事で安住さんの事、好きだってわかったんだ。
安住さんに頼ってもらえる男になるから!
僕が君を守るから!」
私の呼吸がやっと落ち着き本田さんは私をベッドに横に寝かして布団をかけ水と濡れたタオルを持ってきてくれた。
「はい。お水、後タオル濡らしたから咳き込んで、汗かいたでしょ?さっぱりするから拭いて。」
「すみません…あの…私何かおかしな事言いましたよね?」
「おかしな事?言ってないよ。素直な気持ちを出しただけさ!
何か飲むかい?」
「お茶いただけますか。」
「了解。」
本田さんがお茶を入れてる間にパジャマを着替え布団に戻った。
「はい、お茶どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「パジャマ着替えたんだ。そうだね。汗のままじゃ治りかけたものもぶり返しちゃうからね!
さっ!横になってもう休んだ方がいい。」
「はい。ありがとうございます。本田さん明日早いんですよね?
帰って休んでください。
私はもう大丈夫ですから。」
「ダーメ!またさっきみたいに咳き込んだら大変だ。しばらく様子を見てるよ。」
「明日仕事が…。」
「僕は大丈夫だから。」
「でも…。」
「病人は言うことを聞く!」
「…………。」
本田さんは私のベッドの脇に椅子を持ってきて座った。
「安住さん。
行かないでって言ったんですよ。」
「えっ!?」
「咳で苦しくなった時。
僕は安住さんが消えてしまいそうに見えた。だから、抱きしめた…キスをした…。僕が守らなきゃって思ったから…。」
「本田さん…。」
「安住さんはきっと、僕が年下だからとか、会社の上司だからとかって思ってると思う。今だってきっとさっきの事どうしようとか思ってるでしょ?だけどそんな事じゃ僕は引き下がらないから。」
私は本田さんのペースに完璧にのせられている。
「僕は、安住さんに比べれば人生経験は少ない、今だって自分の理性を抑えるのに必死さ。安住さんが欲しくてたまらない。
でも、今この状況であなたを抱く事はフェアじゃないって思うんだ。
でも、あなたが欲しい。」
「直球ど真ん中投げてきますね。」
「自分の気持ちに嘘はつきたくないから…。」
「そうですか…。」
今私の前にいるこの人は、昨日までの彼とは違う。
私を愛する気持ちで溢れている一人の男性に姿を変えた。
「本田さん、」
「はい。」
「あなたの気持ち今正直うれしいです。
あなたが真剣に考えて私を大切に思ってくれている事もわかりました。
私もあなたの気持ちに向き合わないといけませんね。
大人として、一人の女として、あなたの事を見ていこうと思います。」
「安住さん…。」
本田さんは嬉しそうに私の髪を撫でてくれた。
「落ち着きます。」
「本当!?」
私がうなずくと、嬉しそうな笑顔を見せた。
そして…
私にキスをした。
「二人でいる時は、安住さんて呼び方止めてもいいかな…。」
うなずく私に
「僕の事も豊って呼んでよね。」
「えっ!?名前で呼ぶの?」
「僕は呼んで欲しい。
僕は美樹って呼ぶよ。」
「えっ!?呼び捨て?」
「嫌?」
「う~ん…生意気…。」
「年下だけど、付き合いは対等だと思うけど!?
気に入らない?」
「どうしようかな~!?」
「からかってるでしょ!?」「フッ…!。」
「あっ!笑った~!?
お仕置きだな。」
またキスをしてきた。
「ねぇ…ガマン…限界みたいだ…。」
耳元で熱く吐息混じりに囁いた。
「風邪…うつっちゃう…」
「今さら!?さっきから何度もキスしてるのに…。」
私の首筋に吐息混じりに唇が這う。
「あっ…」
「可愛い声だ…美樹…」
「いやっ…はっ…はずかしい…」
指が私の髪…首筋…鎖骨…胸…と吐息か激しくなりなから私の体をなぞる。
「美樹…僕を呼んで…」
「はっ…ゆっ…ゆたか。」風邪の微熱と、二人の体温を感じながら、熱くて甘い夜が過ぎて行った。