ヨーガ療法では,身体の感覚や呼吸など自分の内側に意識を向けることを重視するため,体操中に音楽をかけることや鏡でポーズを見ることなど,意識が外側に向くことを避けて体操を行います.日常生活では慌ただしく外側に向きがちな意識を自分の内側に向けることが,体の状態を知ることや心を落ち着けることにつながると考えているためです.このようなヨーガの体操は自分の内側に意識を集中させるため,Mindfulness Movement(マインドフルネスな運動)と呼ばれることがあります.ヨーガ療法の体操は,自然に「今,ここ」に意識を集中させるマインドフルネスな状態を作り出すと考えられています.

 

では,マインドフルネスにもつながるヨーガ療法の体操は,体のどこを変えることで心に働きかけるのでしょうか?私は,ゆっくりとした呼吸と自分の体の内側に意識を向けることが,次のような感情を司る脳機能に働きかけることが心の状態の変化に影響していると考えています.

 

  • 呼吸に意識を向けることにより不安や怒りなどネガティブな感情を司る脳の部位「扁桃体」の働きが抑えられ,感情のコントロールに携わる「前頭前野」が活性化する.

  • ゆっくりとした呼吸により心の安定をもたらす「セロトニン」という神経伝達物質が増加する.

  • 体の感覚や呼吸,心臓の鼓動に意識を向けることにより身体内部の状態や感情と連動する身体の変化を感じる「内受容感覚」が高まり,身体や感情を適切に制御する力が養われる.

 

 

「分かっちゃいるけど辞められない,変えられない」というのが心の難しさだと思います.不安やイライラ,落ち込みなどを感じるときに,体から心へと働きかけられるのがMind-Body Exerciseの良い点だと思います.ヨーガ療法の体操が,みなさまの心の安定の役に立ちますように.