私は必ずクライアントのみなさまに「どうしてヨガをしようと思いましたか?」と質問しています.その方がヨガをしようと思った動機や目的をお聞きすることで,その方が今の自分の心や体の状態についてどんな風に考えているのか,これからどんな風に変わりたいという思いをお持ちなのかを教えていただき,その方の心と体の状態や思いを大切にした内容のヨガを提供したいと考えているからです.

 

時々,クライアントの方から「先生はどうしてヨガを始めたのですか?」と興味を持っていただくことがあります.もしかすると,私のヨガ歴について紹介することが「REMEDYに行ってみようかな?」と迷われている方の参考になるかもしれないと思い,ここに書かせていただくことにしました.

 

私が始めてヨガを行ったのは第一子の妊娠中でした.2002年のことで,今のようにたくさんのヨガ教室はなく,公民館の一室で行われているマタニティヨガ教室に参加しました.穏やかなヨガの体操や呼吸法の練習が,出産時にとても役に立ったことに驚きました.その後,本格的にヨガを行うようになったのは,手足の冷えや腰痛,肩こり,手の痺れ,肌荒れ,頭痛,不眠症,疲労感,気持ちの落ち込み,生理不順や生理痛,月経前症候群,ストレスによる過食や飲酒など,心身のさまざまな不調を抱えるようになったからです.こうした不快症状を改善したくて,病院はもちろん,漢方薬をはじめ,いろいろな自然療法を試したなかにヨガがありました.妊娠中,ヨガをしていたときに体調が良かったこと,出産時にとても役に立ったことが強く印象に残っていたからです.

 

「心と体の不調を少しでも良くするために,もう一度ヨガをやってみよう」とヨガスタジオを探した時は,ちょうどヨガブームの始まりの頃でした.急激に増え始めたおしゃれなヨガスタジオで,アメリカで流行したスタイルのヨガが行われていました.当時,体調が優れず肌荒れがひどい状態で人前に出るのが辛かった私は,素敵なヨガウェアを着た人たちがいるおしゃれなヨガスタジオに入っていくのにとても躊躇したことを覚えています.その後,ヨガを再開したことで少しずつ体調が良くなっていきました.しかし,ヨガを続け上達するにつれて,無理なポーズを行うことで腰を痛めたことがありました.さらにヨガスタジオに通うなかで,難しいポーズに挑戦することによって,腰や膝などを痛める人がいることを知りました.私はこうしたヨガスタジオでの体験や,穏やかなマタニティヨガで体調が良くなった経験から,健康を回復するためには,無理はせずに自分の体に合わせて,ヨガを行うことが大切だと考えるようになりました.

 

その後,年の離れた子どもたちの出産,子育てなど,ヨガができない時期もありましたが,できる時に,できるペースでヨガを行うことで,自分の体や心と以前よりも少しずつですが,上手に付き合えるようになってきたと感じています.

 

指導者としては,2009年に健康の回復を目的としたヨガのスタイル「Restorative yoga」の指導者養成コースを受講し,ヨガの指導をスタートしました.ヨガを指導する中で,どうすれば心身の不調の改善,健康の回復に効果的なヨガが行えるのか,科学的な視点から理解できるようになりたいと思うようになり,2019年に東京都立大学大学院人間健康科学研究科に入学し,ヨガの生理的心理的な効果について研究をスタートしました.また,同年から伝統的な視点からヨガについて学び,セラピーとしてのヨガが提供できるようになりたいとインドにあるスワミ・ヴィヴェーカナンダ・ヨーガ研究財団のヨーガ療法士養成講座を日本ヨーガ・ニケタンで受講し始めました.これら科学的研究や伝統的なヨガの知恵を学ぶことで,みなさまにより効果的なヨガを提供できるようになりたいと思っています.

 

ヨガを始めて22年.体調が優れない時や,気持ちが落ち込むとき,不安が襲ってくるときに,今も私はヨガをすることで自分自身の不調を改善し,心を安定させようと努めています.「ヨガをすることで痛みや不快な症状が楽になり,心がホッとしたり,スッキリしたりする体験をクライアントのみなさまと共有できればいいな.そのためにはどんな内容のヨガを提供することがいいのだろう.」そうした思いをもちながら.みなさまとのレッスンやヨガ療法士としてのトレーニング,研究活動に取り組んでいます.