「ヨガは自律神経の乱れに効果がある」と言われることがありますが,ヨガは本当に自律神経の乱れによる不調に効果があるのでしょうか? 答えは「Yes」ですが,ヨガのやり方によっては効果の大きさが変わってしまうと考えています.では自律神経とは私たちの体でどんな働きをしてくれているのでしょうか?自律神経の働きが乱れてしまうとどうして不調が起こってしまうのでしょうか?

 

  • 病院に行くほどではないけどなんとなく体調が優れない

  • 体調が悪くて病院に行ったけれど異常はなかった

 

こうした時,私たちは自律神経が乱れているのかな?と思ったり,医師からも「自律神経の乱れですね」と言われたりすることがあります.

 

ではそもそも自律神経とは,私たちの体の中でどんな働きをしているのでしょうか?

自律神経は体のさまざまな臓器とつながり,外部環境や状況に応じて全身の働きを調整し体内の環境を守る働きをしています.この自律神経には,体を活動モードにする「交感神経」と休息モードにする「副交感神経」の二つの神経があり,交感神経と副交感神経はどちらかの活動を活発にしたり抑えたりすることで,シーソーのようにバランスを取りながら私たちの体を環境や状況に適した状態にしてくれます.

例えば,昼間の活動期や「ここぞ!」という頑張り時には体を活動モードにする交感神経が活発になり,副交感神経の活動は低くなります.逆に夜間や睡眠時,マッサージを受けるなどリラックスしている休息モードの時には副交感神経が高まり,交感神経の活動は低くなります.こうした活動と休息を切り替える自律神経のシーソーが環境や状況に合わせて適切に動くことができれば,私たちは頑張り時には体を活発な状態にしてよいパフォーマンスができ,休むべき時にはゆったりとした状態で体を回復させることができます.

 

しかし,残念ながら自律神経のシーソーは強いストレス,睡眠不足,不規則な生活リズムなどによってバランスが崩れてしまうことがあります.自律神経は身体の多くの臓器とつながり全身の血流の調節もしているため,自律神経のバランスの乱れは胃腸の不調,頭痛,冷えなどのさまざまな不調へとつながってしまいます.

 

「ストレスによる自律神経の乱れにはリラックスが重要」ということがよく言われます.自律神経による不調はストレスによって交感神経が高まった状態が続き,副交感神経の活動が低下しているために生じると考えられるためです.しかし,自律神経のバランスの乱れによる不調の全てが,交感神経の活動の高まりや副交感神経の働きが低下したことが原因ではありません.逆に副交感神経の働きが高まり交感神経の活動が低下することで不調が生じることもあります.

 

自律神経の乱れによる不調にはリラックスだけでなく,体を動かして交感神経の活動を適度に高めることも大切だと考えられています.「なんとなくだるい,やる気が出ない」という時は,特に体を活動モードに切り替えてくれる交感神経を刺激してあげることが不調の改善に役に立ちます.さらに体を動かし適度に交感神経の活動を高めたからこそ,その後,体が休息モードに切り替えられるということもあります.お風呂上がりに横になった時の爽快感や散歩後に一服した時のホッとした感じなど,適度な疲れを感じることで,その後,一息ついたときにより緊張が取れてリラックスした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか.

 

では,ヨガで自律神経の乱れによる不調を効果的に改善するためには,どんなことを重視したらいいのでしょうか?私は自律神経に働きかけることができるヨガの要素である「呼吸法」「体操法」「リラックス法」を体の状態に適した組み合わせで行うことで,交感神経と副交感神経の活動の両方をメリハリをつけて刺激し,自律神経のシーソーのバランスを回復させるようにヨガを行うこと.このことが自律神経の乱れによる不調に対するヨガの効果を高めることにつながると考えています.