とっさに出る虚言癖、なんとかならないものでしょうか。
本日は家に誰もいなかったため、下宿人という立場でありながら13時から風呂に浸かるという豪勢な昼下がりを満喫していたのですが、もちろん証拠を残してはいけませんので、入浴を楽しんだ後はすぐさまお湯を切り、何事もなかった顔で一日中部屋に閉じこもっていますと、夕方頃、いとこ達御一行が帰宅してきました。
さて、僕は今日はヒステリックな叔母と対面することなく就寝時間となればなあと、部屋で読書をしていましたら、下の階から僕を呼ぶ声がします、なんですかと問うと『お風呂、お湯張りを予約していたのにお湯が溜まっていないのだけどどういうことかしら。というか、フタの位置が違ってるし……』と、なんとも僕は致命的なミスを犯していたことをその瞬間、その現場に立たされて初めて気が付いたのです。
彼女がお湯張りを予約していたとは予想外でした、僕が予約時間より前にお湯を沸かしたため設定がリセットされてしまったのです、さらに敵の、フタの位置で攻めてくるという緻密な追い討ちにより、僕の立場は断然弱いものとなりました。
ここで僕は普通に『すみません、今日はどしゃぶりだったものですから、お湯に浸かりたくなったのです』と正直に白状したのなら、この対戦の結末は温かく収拾がついたのかもしれません、しかし冒頭で申し上げた通り、僕はこういう緊迫した状況で特に、持病である虚言癖が現れてしまうのです。
『しゃ、シャワーで足を洗っただけです。フタの位置がずれているのは、そ、そうですね、浴槽に水が入らないようにしたんです、その時に少しずらしたのです』
ふうん、と、叔母がおどおどする僕に冷たい視線を向けます、蛇が蛙をいざ飲み込まんとする情景が僕の頭に浮かび上がってきたのは、今日が初めてではないのです。