
[ お祭りで必ず食べるものは? ]
僕の父は深夜から仕事へ行きはじめるため、夜寝るのは早く、お祭りがあるときは大抵近所のおじさんたちに連れて行ってもらっていました。
でね、僕は自分で言うのもなんですが、おとなしくてわがままを言わない扱いやすい子で、特に他人の前ではそれがよりガッチガチに固められた子でした。
だからお祭りに行くと、あれはいらないか、これはどうだといろいろとすすめて買ってくれていたのですが、お祭りの楽しみかたがわからず、反応はそこそこ。きっとおじさんたちはある意味で扱いにくい子だったのかもしれません。
そんな僕も、あの「お絵かきせんべい」は大好きで、必ずやっていました。
大きなせんべいに好きなように絵を描いて、最後に色のついた砂糖をまぶすあれ。
なんか純粋に楽しいって思える作業でした。
で、作り終えるころに、おじさんたちは、もっと塗らないと砂糖がかからないよって言ってくれるのですが、僕はそんなことはどうでもよく、どれだけ自分が好きなように絵を描けるかが重要でした。
余白を砂糖で埋めるのではなく、余白も描くと妙に画家ぶっていたのを今でも覚えています。
それに、食べるのが目的ではありませんでしたし。
それから数年がたった今、
僕はやっぱりまだお祭りの楽しみ方がわかりません。
お祭りでのお金の使い方も分からないんですよね。
ちょっと高いというのはまぁなんとか納得しながら、お祭り価格ということで受け入れているのですが、それでもあれを買いたい、これを食べたいという衝動があまり起きないのです。
わいわいと焼きそばを買いに走ったり、分担してたこ焼きを買いにいったりする作業もイマイチ…
そういう姿に憧れはあったのですがねぇ…
でも…
そんな冷めた時間も
まぶしい時間ではあったかなぁ。
ちいさな金魚を追うことも、
あちこちからするソースの焦げた匂いをたどることも、
おいしくないたこ焼きを皆で食べることも、
人気の無い静かなところで、寄り添って花火を見ることも。
屋台の明かりが霞むほどの光を帯びて。
ふぅ…
お祭りで食べたフラッペで初めて間接キスをしたことも、
相手は何も意識せずに渡してきたことに戸惑ったことも、
淡い光に包まれて。