
[ あなたの好きな街は? ]
自転車で駅まで10分。
何を考えることもなく
何を見るでもなく
ただ上へ下へと回転するペダルをこいで通過する。
あれ?
10分間の風景が思い出せない。
毎日帰るあの町を思い出せない。
右には何があったっけ?
焼き鳥屋さんはどの角だっけ?
この町はどんな色だったっけ?
毎日2回も通り過ぎているあの風景は
僕の目の中を通り抜けるだけだった。
だから気がつかない。
カサカサ照れてる木々たちに。
ぽつんとまるまる黒猫に。
ふわりとすれ違う小さな君に。
おばあちゃんちから見れる、町並みと海を一望できる町はきれいです。
長く伸びた階段が海を目前に折れ曲がるあの風景がいいのです。
どこか風景画にありそうなも思えるけれど、なんだかアクセントが足りていない気がするあの感じがどことなく心を刺激します。
でも僕は、どうやら川辺の町が好きみたいです。
ずっと川辺で過ごしてきたからでしょうか。
絵になりそうな風景ではないのですが、
土手の上で夕暮れ時に犬の散歩をする人が夕日に照らされたシルエット、
ヘルメットをかぶって十数人で列をつくって自転車をこぐシルエット、
静かに萌える河川敷、
すぅっと流れる川の光、
どれもなんだかホッとします。
ふぅ…
白線の上を落ちないように歩いて帰った少年時代。
あぁなつかしや。
でもね、今もほら、白線の上を目でなぞってしまう、
タイルの同じ色を目で追ってしまう、
階段の数を数えてしまう僕がいる。