
僕は階段が好き。
一歩一歩踏みしめる感じが、平らな道を歩いているときよりも強く感じるから。
たった13段の階段でも、13歩歩くよりも数倍疲れる。
重力に反発しながら上へ上へ進むのだから。
僕は8階の研究室へ毎回階段で行く。
それはそれは疲れる。
ただでさえ体力がないのに、8階まで上ると息が切れちゃって仕方がない。
8階まで上ったからといって達成感があるわけでもない。
健康を気にしている訳でもない。
エレベーターが苦手だ…というのは多少関係あるかな?
昔から山登りは嫌いじゃなかった。
遠足で山登りをしたときも、ふもとまでは友達と歩いていたが、山に差し掛かったとたんにエンジンがかかり、黙々と登りだした。
最後尾につけていたはずなのに、気がつけば一番前ではしゃいでいた。
どうやら僕は登るということが好きみたい。
それも自分の足で少しずつ少しずつ登っていくのが。
20センチ程度の段差を13歩踏みしみるだけでひとつ上の世界に辿り着くという状況が。
…ということで、僕はそもそもエスカレータを滅多に使うことはありません。使うときといったら友達と出かけているときくらいでしょうか。
それでもやはりエスカレータに乗ることだってある。
そんなときはじっと並んでいます。例え前ががら空きであろうと。
だって東京なんて5分も待てば次の電車が来る。
そんなに急ぐこともない。
…ここで問題なのは動く歩道。
エスカレータは半分近くはじっと並んでいるのに対し、動く歩道では大半の人が歩く。
そんな中で僕一人立ち止まるのは社会の動きに対して逆らっているかのような気がしてならない。
たった一人、自分の信念を曲げずに開発者の方々の恩恵を受けるか、あるいは社会との共存を目指し、みんなの意に沿うように動くべきか…
案外周りの視線、行動を気にするタイプでございます。そんな人間がスタスタと動く人並みの中で、黙って運ばれていて良いものでしょうか!!
…今一瞬残像の残る人々の中で立ち止まる僕を想像しましたが、動く歩道で止まっているため、ゆっくり運ばれているというなんかかっこ悪い姿が出てきました…
が、それでも僕は……!!!
ちょっとここで僕の好きな作家さんの絵本…というか物語を紹介。(PCでしか見れないかも。)
階段つながりということで。
…いや、そもそも階段ネタではなくエスカレータのネタだったのですがね。
ただ、非常に切ないお話であることを前述しておきます。
ふぅ…
雨が降っている。
それでもセミが鳴いている。
耳をすませば秋虫の声もする。
様々な音が聞こえてくるのに、なって欲しい電話の音はいっこうに聞こえてこない。
それでも僕は待つ。
雨の音も、セミや秋虫の声もかき消すような着信音と、優しい声、そしてふたりの笑い声が響くまで。