
[ 空を飛べるのと、海にずっと潜っていられるのどっちがいい? ]
空を飛べたら、気持ちがいいかもしれない。
風を受け、高く飛び、好きなところへ飛んでいく。
けれど…僕は少し怖い。
世界が小さく見えてしまいそうな気がして。
行きたいところへ向かっているはずなのに、
どんどん小さく、どんどん離れていきそうで。
僕は海にずっと潜っていられる方が落ち着けそうな気がする。
静かにからだを沈め
何をする訳でもなく
ただ波に揺られる。
日の光が届くギリギリのところで。
浮くでもなく、泳ぐでもなく、ただそこに揺られる世界。
空を飛ぶと、いろいろな発見があるかもしれないけれど、海に潜っていたらどれだけの発見があるのだろう。
もしかしたら、見えるものは少ないのかもしれない。
でも
見えることは多いような気がする。
海は怖い。
沈めば沈むほど、世界は暗くなり、見えるものは限られてくる。
もっと潜れば何も見えなくなる。
そんな世界まで沈んだら、僕は日の光を浴びたいと思うようになるのだろうか。
深海魚は海のそこでひっそりと生きる。
太陽の下で生きるのを恐れて。
太陽の下で生きるすべを忘れて。
音の無い暗闇は、魚でさえ…
それでも僕は海で潜っていたい。
水の音のみが体に響き渡り、
からだのちからをすぅっと抜いて。
波で光が反射し、屈折し、きらきらひかる世界を見ながら。
ただそこに。
たまにはシャチと共に泳ぐのもいいかもしれない。
たまには遠くの国まで泳いでもいいかもしれない。
そして夕暮れになれば、陸に上がり、食事をして、テレビを見て、すっと眠りにつく。
今日見えたものを繰り返し思い出しながら。
ふぅ…
花火大会の後で市販の花火をやる人たちを見ると、複雑な気分になっていた。
あれだけすごいものを見た後に、なんで市販の花火が出来るのだろうと。
でも違うのだ。
彼らは花火を見たいんじゃない。
花火を使った時間を過ごしたいのだ。
目的は180度違う。
でも花火大会の直後にやるロケット花火は、趣がないように感じるのは僕だけだろうか。