映画「ハナミズキ」を観た。
とても良かった。
これ多分観る人によって意見が分かれる映画だと思う。

こういう純愛を謳った映画って、大抵10代~20代前半の女性をターゲットにしてると思うんだけど、この映画に関してはおそらく30代以降の、一通り色々な経験をして、苦しい恋を乗り越えたことがある人の方が共感できるんじゃないだろうか。

ストーリー。北海道の進学校に通うさえ(がっきー)と、水産高校に通う康平(斗真くん)は恋人同士だけど、さえの上京で遠距離恋愛になってしまう。東京でどんどん美しくなっていくさえと、地元に残った康平との間にいつしかすれ違いが生じ、さえの将来を思った康平は別れを告げる。
数年後、北海道で行われた友人の結婚式で二人は再会。
康平は既に地元の娘と結婚しており、ニューヨークに渡ったさえも別の男性との結婚を意識している。
お互いへの変わらない思いに身を焦がしつつ、どうにもならない現実に、二人は再度別れを告げ、それぞれの生活に帰っていく。
しかし、康平の離婚、さえの婚約者の事故死などで、もう交わらないかに見えた二人の人生がまた運命の糸によって引き寄せられていく…っていう話。

何が素晴らしいって、生田斗真くんの演技力。
男性の持つ弱さ、ずるさ、衝動…とてもリアルに表現していたと思う。

結婚式で再会したあと、ハナミズキの木の下で、康平がさえを抱きしめるシーン。

ここ一番好きなんだけど、その前の車の中のシーンから、二人がお互いへのどうしようもない恋心を抱えながらも、何も言葉にすることができないもどかしさがよく出てる。

そして車を降りたさえが振り返った時の、康平がさえを見つめる顔。
言い方は悪いけど、完全にオスの顔になってる。
相手が欲しいっていう欲望でぎらぎら燃えていて、その食い入るようなまなざしに呪縛をかけられたように動けなくさえに向かって衝動的に駆け出してくる康平。
気持ちのまま、目いっぱい抱きしめる。受け止め、抱き返すさえ。
お互い一つに溶け合ってしまいたいって思ってるような、相手への愛しさで胸が痛くなるような抱擁だった。

ここが潔癖な10代だと、この時点で康平は別の女性を結婚してるのに不誠実だ、どこが純愛だ…となるのかもしれないけど、時にどうにもならないけど、それでも惹かれてやまない、衝動を抑えられない思いというのは存在するのだ。
ここ感情移入しすぎて胸が痛くなった。

そしてストーリーとしては前後するけど、康平がさえに別れを告げて自暴自棄になり、その寂しさから地元の女友達りつこに手を出してしまうシーン。

ここもね…、完全に自分のやり場のない思いをぶつけてるだけだから、りつこに対して愛の言葉は言わずに、行動だけで自分を受け入れることを要求する。自分に対して相手が好意を持ってると知ってる上で慰めを求めたのだ。
ここは男のずるさがよく出てる…。

そして、康平が自分を愛していないことを知っていながら、拒めないりつこ。分かった上で受け入れてしまうのは、女の弱さであり、好きな男に対する母性だ。

男女の性というものがよく表現されていて、「うんうん、そうなっちゃうよねー…」と思いながら観た。

康平とさえは、何度もすれ違いながら、結局10年越しに愛を実らせる。
映画の後半の展開を、ご都合主義、あり得ないと言う人もいるだろうし、実際こんな偶然は現実世界にはまず起こり得ない。

大抵は、思い合っていても、タイミングが合わなかったり状況が許さなければ、そのまますれ違ったまま人生は分かれていくだろう。

相手のことを心の片隅に抱いたまま、やがて別の人と結ばれ、ふとした瞬間に時折切なく甘い気持ちでかつての成就しなかった恋に思いを馳せる。それが現実。

だから映画では、あり得ない展開で結ばれていいのだ。
観る人は、二人の恋に自分たちの成就しなかった恋を重ね合わせ、当時の切なさを思い出して胸を焦がし、もう一つの結末に夢を託す。
それでいいのだ。映画だもの。

「ハナミズキ」、切なくて良い映画だった。

観ながら姉に、「とーま君か向井君か迷う」とメールしたら、「迷う必要がない!」ときっぱり返信がきた。
ええ全くその通り…。




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