「ゲーテとの対話(上)」をようやく読み終わった…。


上巻最後の備忘録。赤は私の独り言。


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(数学者ラグランジュについて)

彼は善良な人間であった。そして、正しくこのゆえに偉大であった。

というのは、美術家であれ自然科学者であれ、詩人であれ、その他何であれ、善良な人間に才能が備わっている場合はそこに常に倫理的活動が起こってこの世界が浄化されるであろう。

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人には才能があるだけでは充分ではない。聡明であるにはより以上のものを必要とする。

それにはまた偉大なる環境の裡に生活しなければならぬ。

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自然科学にいそしむことなかったらば私はどうとも人間の真相を識るわけにはいかなかったであろう。

これ以外の何を試みてもこれほど、純粋の観照や思考を得られるものではないし、感性と知性との誤びょうや性格の強弱を識るに至るものではない。

すべてのものは、多少とも曲げやすく不安定であり、多かれ少なかれ勝手に扱える。

しかしながら、自然にはごう末の戯れもない。つねに真実であり、真面目であり、峻厳である。

そして、過失や迷誤はつねに人間のものである。この点に通達しない人たちを自然は蔑む。そして、この真相を究めた人のみ、自然は胸襟を披いて、真実と純粋とを明らかにする。

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自然は常に正しく、間違ってるとしたら人間の方…。

この箇所は、ゲーテの自然に対する愛情や畏敬の念に満ちている。

ベートーベンもまた自然を心から愛した。

世界を正しく見て、その中で生かされている人間の姿を見る。

その眼差しの大きさ、豊かさが、ゲーテ自身が他の箇所で述べているように、尽きることの無い創造の泉の源泉となるのだろう。


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どんな時代でも、自己を知るに努めよとよく繰り返して言われるが、この要求は奇妙なものであり今まで誰一人としてこれを満足に果たした者はいないし、もともと果たすことのできないものなのだ。

人間とは身も心も挙げて外面のもの、周囲の世界に依存しているのであって、自分の目的に必要な範囲に限って自己を知り役立てるようにできている。

自分自身については人はただ喜びに会い、悩みを覚えたときだけ知る。そして、その人はこの苦悶と喜悦を通じて自分に関して何を求め何を避けるべきかを教えられるのである。

しかしながら、それにしても人間の本質は不明であり、どこから来たのかもどこへ行くのかも分からない。

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ちょっと難しいので私の理解があっているか分からないけれど、自己を知ろうとしても、ただ自分自身を単体で見つめるだけでは決して知ることはできない。

なぜなら人は周囲の世界と関わって生きているから、その部分を見て初めて自分自身について知ることができる。

環境が自分を作り、自分が環境を作る。今自分を取り囲む環境や人々の姿は、自分自身の反映である…とか、そういう意味なのだろうか。


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われわれの永生について私は疑わない。なぜなら、自然は不滅活動(エンテレヒー)を息めないものであるから。しかしながら、私たちはこのまま無為にして不滅となるのではない。

未来の自分を、偉大なエンテレヒーであるとして宣言するためには、現在もまた、不滅の活動をしなければならぬ。

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人間はその活動によって不滅の存在となることができる。ただし何もしなくて自然とそうなるのではなく、現在のたゆまぬ活動が将来のそれを形作る。

まさにゲーテの存在は文学史上不滅の輝きを放っているけれど、若き日から亡くなる直前まで仕事をしていた、不断の営みがあってこそ。


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(エッカーマンの、優れた才能の人、特に詩人には弱い身体の人が多いという疑問に対して)

こうした人のし遂げる異常な仕事は、きわめて繊細な生理構造を前提とする。それゆえ、感受力も非凡になり、天来の声をも聴き取ることができる。

それに、こうした身体は世界や宇宙の間に起こるもつれによってたやすく躓き、傷つけられる。

それで、ヴォルテールのように偉大な感受性と異常な粘り強さを兼ね備えることがなければ、絶えず病魔に襲われがちである。シラーもまた、始終病気であった。

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私も学生時代、なんで文豪とよばれる人って自殺する人が多いんだろうって思ってた。

繊細な感受性が身体に負担をかける…そこまで苦しんで一つの作品を書き上げてる作家って今どのくらいいるんだろう…。

ケータイ小説とかアホみたいにくだらない本は巷に溢れかえっているけれども…。


上を読み終わったので、そのまま下に突入。

下ではゲーテの子息が亡くなったり、ゲーテとエッカーマンとの師弟の絆の深さが随所にあらわれていたり。


対話は進み、いよいよゲーテの人生の総仕上げに向かっていく。


次はどういう英知の言葉に出会えるのか。楽しみ楽しみ。