音楽療法の一種に、同質の原理というものがある。
聴き手の気分やテンポにあった曲を聴くことで、精神的に良い方向へ向かわせる力があるとか。
自分が悲しい気分の時に、相手に悲しい気持ちを共感してもらえると傷が癒えていくのと同じ原理だそう。
私は朝にとても弱いので、寝過ごすことがないようコンポのタイマーには元気めの曲をかけることがよくあったのだけど、これはあまりよくないらしい。
朝のぼんやりした気分には、クラシックとかボサノバとか落ち着いた曲の方が良いとか。
同質の原理を知ってから、朝はヒーリングミュージックやクラシックに切り替えたが、確かに元気なポップスより目覚めたときの気分がとても良い。
それからは、自分の今の気分にあった音楽をなるべくかけるようにしている。
ちなみに今夜はアレッド・ジョーンズ。
1980年代初期に天才ボーイソプラノとして活躍した歌手だ。
姉が昔合唱部に入っていて、ウィーン少年合唱団のCDを聴いていたことから私も好きになった少年合唱。
同じソプラノでも、女性の肉感的な声より、硬質で澄んだ声に輝きと安らぎを感じる。
ボーイソプラノは、声変わりまでの何年かに許された特別な声。
選ばれし聖歌隊の少年たちの中でもとりわけ美声を誇る少年たちが、時を越えてソリストとして名を残している。
日本で有名なのは…ボーイズエアークワイアのコナー・バロウズだろうか。
私が好きなのはドイツのテルツ少年合唱団で、初期(1950年代位…笑)に活躍したハンス・ブッフヒール君。
テルツ少年合唱団の魅力は、とにかく子供らしくて元気なところ。
ころころ指揮者が代わるウィーン少と違って、設立当初からシュミット氏がずっと指揮をしてるせいもあるだろうが、時代によって実力がぶれることもなく、子供たちがのびのびと歌ってるのが良い。
中でもハンス君の歌声は非常に個性的。
声量や伸びが特に際立ってすごいというわけじゃないんだけど、声に温かみがあって、高音の柔らかさや、どの歌も自分の解釈で楽しんで歌ってるのが伝わってくるような、まさしくボーイソプラノの醍醐味が伝わってくるような声。
もっとうまい子はたくさんいるんだけど、やっぱり一番好きなのはハンス君。
(はまって一時期CDを買いあさっていたのだけど、この前ラックを見直したらハンス君がソロを努めてるモーツァルトのレクイエムがあって驚いた。ミキティのSPのあのレクイエム…。大好きな曲なんだけど、うちにCDがあったとは…自分で買っておいてどんだけいい加減なのか、私。笑)
イギリスの聖歌隊出身のアレッドジョーンズは素朴な声のハンス君とは対極的で、まさしく洗練された歌声。
ボーイソプラノなのに安定した声量と高音の伸びは素晴らしい。高音でも声が全くつぶれない。
最初に聴いたときは思わず「うめぇ!」(←稔)と叫んでしまったほど…。(ちょっと嘘)
変声期を迎えてからは、テノール歌手を志すもののあんまりうまくいかなかったらしい。
少年期には100年に一人のボーイソプラノと言われていたのに…。
ボーイソプラノの輝きは本当に一瞬。
ボーイソプラノがよく歌う定番の曲は、「アベマリア」「ピエイエズス」「カロミオベン」だの多々あるが、私が一番好きなのは「オンブラマイフ」。
ヘンデル作詞の「木陰で」という意味のこの曲。
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これほど愛おしく、優しく快い木陰はあっただろうか
私にとってお前は大空
ありがとう、
これほど素晴らしいところは他にないのだから
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木陰で得られるひと時の涼への感謝と歓びをうたったような優しい曲。
聴いてると、爽やかな若葉から木漏れ日が柔らかく降り注いでいるような、明るい田園地帯の森の風景が目の前に浮かんでくるよう。
これを歌うのは、やっぱり湖面のように澄み切った少年の声が一番合う。
なぜ今夜アレッドジョーンズを聴いているのかといえば、ラーメンだけじゃ癒しきれなかった心を癒すため…(笑)
オンブラマイフを聴いて、優しい眠りに落ちよう。
明日はまた、新しい日。
プチトリビア。
なぜウィーン少が天使の歌声といわれるのかと言うと、もともと彼らの本業は教会で聖歌を歌うことなのだが、かつて歌う場所が教会の上の階にあり、その姿は下にいる参列者たちには見えなかったそう。
なので、参列者からすると姿は見えず、まるで声だけが天上から降ってくるように聴こえたので天使の歌声と言われるようになったそうだ。
